[特別レポート]

韓国のDMB/WiBroの最新動向(3):HSDPAとの競合激化 韓国版モバイルWiMAX「WiBro」の現状(その1)

2006/10/25
(水)
SmartGridニューズレター編集部

前回までに、韓国の携帯向けデジタル放送(DMB)を紹介しましたが、今回から韓国の新しいワイヤレス・ブロードバンドとして注目されている、韓国版モバイルWiMAX「WiBro」の現状を報告します。現在、韓国では、第3.5世代(3.5G)携帯電話サービス「HSDPA」のサービスが開始(2006年5月)され、続いて同時期に「WiBro」の商用サービスが開始(2006年6月)されたため、国際的にも珍しい「ワイヤレス・ブロードバンド市場の競合」が激化しています。ここでは、ソウルを中心にサービス・エリアの拡大を推進している「WiBro」商用サービスの現状をレポートします。

韓国で激化するワイヤレス・ブロードバンド市場

【1】HSDPAに続いてWiBroが市場に参戦!

韓国では、新しいワイヤレス・ブロードバンド規格が次々に商用サービスを開始し、国際的な注目を集めています。

まず、SKテレコム(2006年5月)に、続いてKT(Korea Telecom)の子会社KTF(KT Freetel、2006年6月)から、3.5世代(3.5G)の高速データ通信規格「HSDPA」(下り最大1.8Mbps)のサービスが開始されました。

さらに、2006年6月末から、KTとSKテレコムから、下り最大25Mbpsの新しい高速ワイヤレス・ブロードバンド「WiBro」(Wireless Broadband)の商用サービスが同時に開始されたところから、ワイヤレス・ブロードバンドをめぐって、激しい市場競争の時代に突入しました。

この新サービスの「WiBro」は、都市規模をカバーする新しいIEEE 802.16標準であるある802.16e-2005に準拠する韓国版のモバイルWiMAXの呼称であり、当面、首都ソウル地区でサービスが展開されています。

図1に示すように、無線LANは喫茶店やホテル・空港などのスポットでサービスを提供し、3G/3.5Gの携帯電話サービスはほほ全国をカバー(無線WAN:Wide Area Network)しています。WiBroはこの両者の中間的な位置づけであり、人口が密集し通信のトラフィックの多い首都圏のホットゾーンをカバー(無線MAN:Metropolitan Area Network)する高速インターネット接続サービスなどを提供しています。

図1 無線LAN、無線MAN(WiBro)、無線WAN(3G/3.5G)のすみ分け

図1 無線LAN、無線MAN(WiBro)、無線WAN(3G/3.5G)のすみ分け

【2】WiBro商用サービス実現の背景

このWiBroは、韓国情報通信部が、韓国のIT産業の国際競争力を強化して、世界のIT産業をリードするために策定したIT839戦略(8大サービス、3大インフラ、9大成長エンジン)の重要な一翼を担っているプロジェクトの一つです。

このため、2005年11月に韓国のブサンで開かれたAPECサミットで世界初の実験サービスを実現、さらにKTは2006年3月1日からソウルの中心地域で試験サービスを行っています。この試験サービスでは、法人を含めた3,000人のモニターに端末を貸与して、ユーザーの意見を聞き、その反応を見てWiBro商用サービスを開始しています。

WiBro対応の端末は、サムスンなどがデータ通信カード(PCMCIA)、スマートフォン・PDA端末、3GとWiBroのデュアル端末などを開発しています。最初は、データ通信カードとスマートフォン・PDA端末中心に普及させ、2006年末~2007年初には3GとWiBroのデュアル端末を導入する見込みとなっています。

なお、KTはモバイルWiMAX(WiBro)の国際的なグローバル・ローミング・ベルトを作り出すため、2006年5月に21の通信事業者と共同でWMC(WiBro/Mobile WiMAX Community)を設立しました。

また、TTA(Telecommunications Technology Association、韓国情報通信技術協会)は、2006年2月に、WiMAX フォーラムからWiMAX認証機関として指定されました。これによって、韓国のWiBro端末や無線基地局などの機器は、TTAによって 韓国の国内で認証できることになり、迅速なサービス導入が可能になっています。

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