[標準化動向]

802.11n(無線LAN)の標準化動向(4):600Mbpsを実現するMAC副層の仕組み

2007/01/09
(火)
SmartGridニューズレター編集部

【3】重要なビーム・フォーミングの技術

次に、表1の右側のオプション項目として重要なのは、中央に示す送信ビーム・フォーミング(まだ審議中)である。ビーム・フォーミングとは、アンテナで電波の方向性(指向性:ビーム)を制御して効率的に受けられるようにするための技術である。電波を効率的に受けられるように、アンテナの方向を制御する、つまり電波の来るほうにアンテナの方向を絶えず制御してやることが必要である。このとき、アンテナを機械的に電波が来る方向に動かすのではなく、アンテナを電気的に動かす方式が採用されている。

例えば、今までの電子レンジの場合は、温める食品を乗せたお皿のほうが機械的に回っていたが、現在の電子レンジは、お皿は固定したままで、電磁波のほうが回ってお皿の上の食品を温めている原理に似ている。

すなわち、ビーム・フォーミングとは、対向する2つのアンテナ間で効率的に電波を送受信するために、アンテナを双方で電気的にビームのほうに向けるようにする仕組みである。無線LANは、いつどの端末が、どの端末に送るかがわかっていないシステムであり、また、端末も動き回る。

そのようなモバイル環境を想定して、時々刻々と変わる通信環境に対して、電気的なビームの追尾には、それなりのアルゴリズム(演算処理)が必要であり、現在標準化ではいろいろと議論がされている。その中には、プロトコルを使って、アクセス・ポイントと端末がそれぞれ情報を送りあって、どのようにビームを向けるとさらに通信環境が向上するかを決めるような、クローズ・ループの方式などが議論されている。

MACにおけるフレーム・フォーマットの改善

【1】PDUとSDUの違い

次に、802.11nにおけるMAC副層で扱うデータのフレーム・フォーマットについて解説する。MAC(Media Access Control、媒体アクセス制御)副層とは、通信が円滑に行われるように、端末から送出されるフレームが空間で衝突しないように制御したり、送信するデータのフレーム(MACフレーム)を組み立てたりする重要なレイヤである。

一般に、通信を行う場合、各レイヤ(層)で扱うデータのフレーム・フォーマットは、PDU(Protocol Data Unit、プロトコル・データ単位)と呼ばれる。また、このPDUを作成するためのサービスは、同じレイヤ内のPDUの上位のSDU(Service Data Unit)から提供される。

【2】MAC副層におけるMPDUとMSDU

例えば、表2に示すように、MAC副層で扱われるPDU(データ・フォーマット)は、MACのMを付けてMPDU(MAC Protocol Data Unit、MAC副層で扱うプロトコル・データ単位。単にMACフレームと呼ばれることもある)と呼ばれる。このMPDUの上位には、下位のMPDUのフレーム・フォーマットを作成するためのサービスを提供するMSDU(MAC Service Data Unit)が位置づけられている。

表2 各層におけるSDU/PDUの位置づけ
表2 各層におけるSDU/PDUの位置づけ(クリックで拡大)
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