写真1 エリクソン・ジャパン株式会社 CTO 鹿島 毅(かしま つよし)氏 | 図1 エリクソンモビリティレポートの表紙(2024年11月26日発行、全40ページ) |
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![]() 出所 エリクソンWebサイト |
[5Gの最新マーケット動向] |
2027年に5Gユーザー数が主流となる
2024年度第3四半期の5Gモバイル加入者数は1億6,300万件増加し、合計21億件となった。ただし、現状ではまだ4G(LTE)ユーザー数の方が多く、5Gユーザーが過半数を占めるようになるのは2027年前後になると予想される(図2)。
5G通信は当初、4G(LTE)の設備と5Gの基地局を組み合わせたNSA(Non Stand Alone、4Gと5Gの併存システム)でサービスを開始、現在は、本来の5G専用機器や標準化された5GC(5G Core Network、5Gコアネットワーク)で構成する5G SA(Stand Alone)への移行が急ピッチで進められている。5G SAユーザーは現在12億人程度だが、2030年には30億人程度になるとエリクソンでは見込んでいる。
SA化によって、従来のNSAでは提供できなかった各種の先進的な機能やサービスの提供が可能となり、それはマーケット全体のポテンシャルアップにもつながる。そこを睨み、今後は新たなサービスの開発や提供が活発になることが予想される。
一方、2030年前後には次世代の「6G」(第6世代モバイル通信システム)も登場する。現在では、そのための標準化や周波数割当などの検討が進められている。
図2 2030年までのモバイル加入契約者数の推移(5Gは2030年に63億件に到達見込み)
出所 エリクソン・ジャパン株式会社、「エリクソンモビリティレポート 2024年11月版記者説明会」より
5G Advanced:5Gならではのサービス、機能の導入・展開が進む
5G SAでは、5Gを発展させた拡張版で3GPPリリース18以降の仕様として検討されている「5G Advanced」と呼ばれる、次のような各種技術セットの導入が順次見込まれている(図3)。
(1)複数の帯域を束ねることによって、通信速度を高速化するキャリアアグリゲーションによるダウンリンク(下り)/アップリンク(上り)通信
(2)デバイスやユーザーごとの接続先の差別化
(3)基幹業務用のタイムクリティカル通信(遅延時間などの時間制約の厳しい通信)
(4)IoT機器と5G通信を行うための新しい通信規格「RedCap」(レッドキャップ)注1。
(5)衛星通信やドローン、船舶などすべての移動体を多層的につなげるNTN注2。現在、通信自体は4G(LTE)端末でも可能となっているが、3GPP注3で規定されているNTN通信方式の端末が2025年頃からの普及が見込まれている(後述する本編「トピックス」欄を参照)。
これらの機能やサービスはネットワーク側だけでなく端末側の対応も必要であり、対応端末の普及状況も注視する必要がある。スマートフォン市場は、過去3年間縮小していたが、ここにきてプラスに転化、さらにAI機能の搭載や液晶が折りたためるモデルなど、新機種の投入もあり活況が見込める。それが5G SAの普及を刺激する、と鹿島氏は述べる。
図3 5Gテクノロジーのデバイス準備状況
FWA:Fixed Wireless Access、固定無線アクセス
出所 エリクソン・ジャパン株式会社、「エリクソンモビリティレポート 2024年11月版記者説明会」より
注1:RedCap:Reduced Capabilityの略、レッドキャップ。5G端末の機能を制限(機能縮小)した5GのIoT端末向け仕様(最大伝送速度:下り150Mbps/上り50Mbps)。RedCap(3GPPリリース17)についでeRedCap(3GPPリリース18)が策定されている。これらによって、監視カメラやスマートグリッド・デバイス、産業用センサー、その他のウェアラブル デバイスなどへの幅広い用途が可能になる。
・eRedCap:enhanced RedCap、RedCapを低消費電力化した 拡張RedCap仕様(最大伝送速度:上り/下りとも10Mbps)。
注2:NTN:Non-Terrestrial Network、非地上ネットワーク。さらなる通信エリアの拡大に向け衛星やHAPS(ハップス)などの非陸上系媒体を利用して、通信エリアを地上だけでなく空・海・宇宙などのあらゆる場所に拡張するネットワーク。HAPSとはHigh Altitude Platform Stationの略。成層圏に位置する通信プラットフォーム。
注3:3GPP:3rd Generation Partnership Project。移動通信システムの標準化作業を行う国際標準化組織。