[スペシャルインタビュー]

NGNの展望と課題を聞く(5):NGNのオープン化と放送・通信の融合

2007/01/31
(水)
SmartGridニューズレター編集部

NGNのキラー・アプリケーション「IPTV」

—放送・通信の融合と言ってもけっこうハードルは高そうですね

青山友紀氏

青山 今説明した技術的課題が解決されただけでは、放送・通信の融合の実現は難しいのです。このほかに、制度(放送と通信の規制の違い)の問題や、DRM(Digital Right Management、デジタル著作権管理)、どのような料金に設定するか、その課金の方法などの課題もあります。また、国際的な標準化が検討中ではありますが、すでにいろいろな形態でIPTV(IP放送とも言われる)のサービスが、トリプル・プレイ・サービスの一環として提供され始めています。

このように、技術的課題、制度的課題、ビジネス上の課題はありますが、とくに昨年(2006年)から、IP網でテレビ放送を行うIPTVは、世界的に大きな関心をもたれるようになってきています。例えば、2006年3月には、ロンドンでIPTV World Forum、同4月にIPTV World Conferenceの開催をはじめ、IPTVのイベントが次々に開催され、また、ITU-TでもIPTVの標準化議論がスタートしています。

IPTVに関する各種の市場予測調査でも、今後の市場の成長性が非常に高く評価されています。しかし、前述したように、IPTVを実現する方式の国際標準化の議論はスタートしたばかりであり、世界の各地域、国によってIPTVへのアプローチの方式はいろいろある状況となっています。ITU‐TでのIPTVの標準化を急ぐ必要があります。

—そのITU‐Tでの標準化の状況はいかがでしょうか

青山 ITU-Tでは、IPTVはNGNのキラー・アプリケーションの一つとして位置づけられており、これに関する技術の標準化を目指す「FG IPTV(Focus Group IPTV)」が2006年7月に設立され、本格的な標準化の作業が開始されています。FG IPTVとは、テーマを限定(フォーカス)して、集中的に審議するグループで、1年程度の標準化期間を目安にしており、2007年にも制定される予定のNGNリリース2に反映されることになっています。

—IPTVについては、どう見ておられますか

青山 IP網(インターネット)上でテレビ放送を提供するIPTVについては、先ほど申し上げたように、同時に何千万世帯に同時配信するとなると、IPマルチキャストではまだ技術的・経済的な課題が多数あります。しかし、例えばCATV程度の、数万から数十万レベルの同時配信数をCATVの料金レベルで提供できれば、IPTVは十分可能であると思います。問題は、著作権なども含めた制度の問題のほうが大きいでしょう。

しかし、全国の家庭で同時に紅白歌合戦やワールドカップ・サーカーの番組を見るような場合は、何千万人もの視聴者が一斉に見るわけです。そういうことがIPのマルチキャストで経済的かつ放送品質で可能かといえば、まだまだ課題は多いのですね。

また、IPTVの映像配信の形態については、図3に示すように、オンデマンド型でやるのかライブ中継型なのか、放送型なのか、これらをミックスしてサービスするのか、いろいろな形態が考えられており、2007年の中頃には、IPTVの標準化の目途がたつと期待されています。

図3 IPTVの映像配信の形態
図3 IPTVの映像配信の形態(クリックで拡大)

これまでNGNについてお話した内容をまとめてみますと、次のようになります。

(1) NGNは、インターネット、固定電話、携帯電話の良いとこ取りのネットワークとすること、またインターネットの直面する課題を解決するものであること

(2) NGNは、放送と通信の境界領域に新しいブロードバンド・サービス・ビジネスを生み出す新しいネットワークとすること

(3) NGNは、ユーザーの選択肢を許容するオープンなネットワークとすること(携帯電話でも、パソコンのように秋葉原でソフトを買ってきたらいろいろなことができるようにする、というようなこと)

(4) 各ステークホルダー(利害関係のある人たち)が公平に競争できるネットワークとすること

以上のようなことが、次世代ネットワーク(NGN)が目指す方向だと思います。(つづく)

■■■

次回(最終回)は、NGNの次にくる「新世代ネットワーク」についてです。
ご期待ください。

プロフィール

青山友紀氏

青山 友紀

慶應義塾大学
デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構 教授

略歴
1969年 東京大学大学院電気工学科 修士課程修了。同年、日本電信電話公社入社。以降、電気通信研究所において情報通信システム、広帯域ネットワークなどの研究に従事。1973年より1年間、米国MITに客員研究員として滞在。1994年 NTT理事 光エレクトロニクス研究所所長、1995年 NTT理事 光ネットワークシステム研究所所長を歴任。1997年より東京大学工学系研究科教授。2000年より2006年3月まで、東京大学大学院情報理工学系研究科教授。2006年4月、慶應義塾大学に転じ、現在、同デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構教授。工学博士。デジタル信号処理、光通信、超高精細映像、などに関する著書(共著、監修を含む)多数。

主な役職
日本学術会議会員、電子情報通信学会フェロー、現在 同学会副会長、IEEE Fellow、超高速フォトニックネットワーク開発推進協議会会長、デジタルシネマ実験推進協議会会長、NPOディジタルシネマコンソーシアム理事長、NPO映像産業振興機構理事、ユビキタスネットワークフォーラム副会長、JGN2(ジャパンギガビットネットワーク2)運営委員会委員長

主な受賞歴
第9回電気通信普及財団テレコムシステム技術賞(平成6年)
平成12年度情報通信月間志田林三郎賞
第47回前島賞(平成13年度)
電子情報通信学会論文賞(平成14年度および平成16年度)
電子情報通信学会業績賞(平成16年度)
情報通信技術委員会 情報通信技術賞総務大臣表彰(平成16年度)

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