[特集]

神尾 寿の新ビジネス・モデル研究(4):Suica/PASMOで拡大・活性化するレールサイド・ビジネス

2007/03/28
(水)
SmartGridニューズレター編集部

沿線ビジネスを「レールサイド」で囲い込む

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さらに、住宅開発事業まで手がける大手私鉄では、公共交通事業と連携して沿線の経済圏をPASMO電子マネーやポイントサービス、クレジットカードビジネスで囲い込もうとしている。例えば東急電鉄では、沿線である世田谷区や目黒区の商店街におけるPASMO電子マネー導入を、ポイント連携などで支援。たまプラーザや二子玉川、自由が丘、大岡山などの再開発事業とも連携し、街ぐるみでPASMO電子マネーと東急のポイントプログラムの普及を進めていくという。

これは駅と駅周辺をSuica/PASMOの電子マネーや鉄道各社のポイントプログラムで囲い込み、そこに緩やかで大きい経済圏を作ろうという動きである。

モータリゼーション後、クルマ依存社会となった地方・郊外では、国道沿いに店舗が建ち並び、大規模駐車場を完備した大型SC(ショッピングセンター)が地域の消費中枢になる「ロードサイド経済」が発生した。これに対してSuica/PASMOの動きは、公共交通を導線として沿線に経済圏を作る「レールサイド経済」と言える。そこで紐帯になるのが、電子マネーとポイントプログラムによる囲い込みというわけだ。

調査会社のインフォプラントによると、首都圏(東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県)在住の若者=M1・F1層(※1)の「クルマ離れ」が進んでおり、調査対象の74.1%が車を買わない理由として「今の生活ではとくに必要性を感じないから」と答えているという。また、公共交通など「他の交通機関で事が足りているから」と答えた回答者も51.9%にのぼった。首都圏に限れば、クルマに依存しないレールサイド経済を構築する素地は十分にある。

Suica/PASMOの相互利用開始により、首都圏の公共交通は利便性が高くなり、まるで“歩いて出かける”感覚で電車やバスに乗れるようになる。さらに今後、沿線でSuica/PASMO電子マネーが利用できる店舗が増えて、様々なポイントプログラムや電子クーポンで"消費者にメリットがある囲い込み"が行われるだろう。Suica/PASMOの広がりは、首都圏在住者のライフスタイルを変化させ、様々な新ビジネスや新サービスを生み出す土壌になりそうだ。

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用語解説

※1 M1・F1層:テレビ視聴率集計区分のひとつ。M1層とは20〜34歳の男性層、F1層とは20〜34歳の女性層のこと。

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