IMSにおけるQoSポリシー制御手順
それでは具体的に、QoSポリシー制御機能を使って、IPベアラのリソースを確保しながらセッションを開始する手順の一例を、3GPPリリース7をベースにして説明していきましょう(図2)。
音声やビデオなどのメディアの内容やコーデック(符号化/復号装置)など、マルチメディア・セッションの内容を記述するためには、SDP(Session Description Protocol、セッション記述プロトコル)が使用され、SIPメッセージ上にのせてIMS端末間でやり取りされます。例えば、IMSにおけるマルチメディア・テレフォニー・サービス(MTSI:Multimedia Telephony Service for IMS)では、音声であれば、AMRやAMR-WB、ビデオであればH.263やMPEG-4、H.264/AVCなどの複数のコーデックが規定されているため、端末がサポートしているコーデックをお互いに確認したうえで、セッションを開始する必要があるからです。
まず、最初のINVITE(セッション確立要求)および183 Session Progress(セッション進捗状況)メッセージのやり取りによって、開始したいマルチメディア・セッションの内容とIMS端末がサポートしているコーデックがやり取りされます〔図2(1)〕。この際に、SDPに記述されるサービス(メディア、必要帯域等)の提供可否が端末間で合意されるとともに、PCRFで判断・許可されます。またサービスに必要なIPベアラのリソースの確保も、着信側で開始されます。
次に、PRACKおよび200 OKメッセージのやり取りにより〔図2(2)〕、端末間で複数のコーデックをサポートしているような場合には、具体的に通信で使用するコーデックが選択され、サービスに必要なIPベアラのリソースの確保が発信側で開始されます。発信側のIPベアラのリソースが確保された時点で、UPDATEと200 OKメッセージのやり取りにより〔図2(3)〕、IPベアラが発着ともに使用可能な状態になったことが確認されます。この時点で、着信側の呼び出しが可能となり、呼び出しが開始されたことが、180 Ringingメッセージで発信側へと通知されます〔図2(4)〕。その後、着信側が応答し、200 OKメッセージが発信側へ送信され〔図2(5)〕、最終的にお互いに通信が可能となります。
このように、お互いのリソースの予約状況を確認しながらSIPセッションを確立する手順には、IETFで標準化されたRFC 3312"Integration of Resource Management and Session Initiation Protocol (SIP)"(リソース管理とSIPの統合)が利用されています。
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用語解説
IP-CAN:IP Connectivity Accsess Network、IP接続を提供するアクセス・ネットワーク
P-CSCF:Proxy-Call Session Control Function、端末と接するSIPサーバ
GGSN:Gateway General Packet Radio Service、関門GPRSノード
AMR:Adaptive Multi-rate、適応型マルチレート
AMR-WB:AMR-Wideband、広帯域AMR
PRACK:暫定応答の送達確認
200 OK:要求に対する完了応答
UPDATE:セッションに関連するパラメータ更新