2016年5月31日、株式会社東芝(以下:東芝、東京都港区、代表執行役社長:室町 正志)は、ケーブルを使用しなくても充電が可能なワイヤレス充電システムを開発し、長寿命、高出力なリチウムイオン二次電池「SCiB(TM)」を搭載した中型EVバスの実証走行を2016年6月1日から開始することを発表した。
写真1 実証走行を行うEVバス 外観イメージ
同EVバスは、日本で初めて高速道路を走行するワイヤレス充電のEVバスであり、川崎市と全日本空輸株式会社(以下:ANA)の協力を得て、川崎市殿町※1と羽田空港内ANAの拠点間約11kmを走行する。実証走行を通じて、ワイヤレス充電の利便性やCO2削減効果の検証などをおこなう。
ワイヤレス充電システムは、ケーブルを使用することなく地上の電源装置から車内に搭載された蓄電池に電気を送ることができるシステムである。運転席でのボタン操作のみで充電ができるため、充電時の安全性と利便性を向上させることができる。従来型の電磁誘導方式※2よりも送受電パッド間が離れた状態で送電することができる磁界共鳴方式※3に、さらに東芝独自の充電パッド構成を採用することなどによって、送電パッドと受電パッドが左右20cm、前後10cmまでずれていても充電することが可能となった。(写真2参照)また、放射エミッション値※4の基準を満たしているため、電波を利用する周囲の設備に影響を与えることはない。
写真2 ワイヤレス充電装置
今回の実証走行は、環境省委託事業「CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業」の一環として2014年度から進めているもので、ワイヤレス充電技術は、早稲田大学理工学術院紙屋雄史教授研究室と共同で開発された。同技術を搭載した小型のEVバスは2016年2月に実証走行を開始している。
※1 国家戦略総合特区に指定されている川崎市殿町キングスカイフロント地区
※2 電磁誘導方式:送電・受電パッドそれぞれのコイルを近づけ、送電側のコイルに電流を流すことで、受電側のコイルの中にも磁流を発生させ、受電側のコイルに電流を流して電力を伝送する方式
※3 磁界共鳴方式:電磁誘導による電力伝送に加え、送電・受電パッドの共振周波数を同じにすることで共鳴現象を発生させ、伝送距離や位置ずれ許容範囲を向上させた方式
※4 放射エミッション値:電力伝送システムから周囲に放射される不要な電磁波の強さ
■リンク
東芝