CSSは2016年11月4日、同社が無料で提供している太陽光発電所診断サービス「Yield Vision」に、太陽光発電パネル単位の異常を検知する機能を付け加えたと発表した。Yield Visionは、太陽光発電所の発電量データをクラウドで解析し、パネルの汚損などの異常を検知する機能を持つサービス。自社で運営している太陽光発電所の監視用に構築したサービスを無償で提供している。
今回加わった機能は、太陽光発電パネルを構成する「クラスタ」単位の異常を検知するもの。一般に、太陽光発電パネルは3つのクラスタで構成してあり、クラスタ単位で電気回路を作っている。いずれかのクラスタの配線が断線したり、はんだ接合部に異常が発生すると、ほかのクラスタが正常でもパネル全体の発電量が大きく低下してしまう。
図 太陽光発電パネルは3つのクラスタで構成してある
出所 CSS
そして、1枚のパネルの異常が太陽光発電所では大きな問題となる。太陽光発電所では、複数の太陽光発電パネルを直列で接続した「ストリング」を構成する。1つのストリングには20枚ほどの太陽光発電パネルがつながる。このストリングを複数作ることで、太陽光発電所が成り立っている。
1枚のパネルに異常が発生すると、そのパネルがつながっているストリング全体の発電量が低下してしまう。ストリング内の1枚のパネルに異常が発生し、パネル出力が低下すると、ストリングを構成するほかのパネルの出力も同程度に落ちてしまうのだ。
図 1つのパネルの異常が太陽光発電所全体に大きく影響する
出所 CSS
パネル異常の原因が汚れや、外見から明らかにわかる破損や影なら、原因をすぐに特定し、対策を打つことができる。しかし太陽光パネルのクラスタ配線の異常は、外見からは判断できないため、発生箇所の特定が難しい。専用の測定機器でパネルを1枚1枚調べなければならないので、異常が発生したパネルの特定に長い時間がかかり、その間は発電による収入が大きく減少してしまう。
CSSが今回Yield Visionに加えた機能は、ストリング単位で電流量の動きを調べて、クラスタ異常が発生したときに知らせる機能だ。ストリング単位で発電量などを監視する「ストリング監視システム」は、電流量があらかじめ設定したしきい値を下回ったときに警告を出すものがほとんどで、クラスタ異常の検知は難しかった。
CSSは、ストリングの電流量の変動を独自のアルゴリズムで解析することで、クラスタ異常の検知を実現した。CSSが運営している太陽光発電所でこの機能を使ったところ、警告が出たストリングではほぼ100%の確率で故障したパネルが見つかったという。
このようにクラスタ異常が発生しているストリングを特定できれば、最大でも20枚程度のパネルを調べれば良いので、原因となっているパネルもすぐに特定でき、すぐに交換できる。CSSが運営している太陽光発電所では、Yield Visionが警告を出した時点で異常をストリング単位で特定できるので、故障への対応も1人の作業員が数日で済ませることができたという。ストリング単位で異常を検知できないと、太陽光発電所にあるすべてのパネルを調べて回ることになるので、原因特定だけでも長い時間がかかる。
Yield Visionは、ストリング単位で監視するシステムと、計測したデータをインターネットに送信する回線があれば利用できる。利用者は、Yield Visionが毎日発行するレポートで、発電所の状態をつかめるようになる。
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