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漏電でケーブル接続部が破裂して延焼か、東電PGが新座のケーブル火災事故の報告書を提出

2016/11/10
(木)
SmartGridニューズレター編集部

東京電力パワーグリッドは、10月に発生した地下ケーブルの火災事故とそれに伴う停電についての緊急点検の結果をまとめた報告書を経済産業省に提出した。

東京電力パワーグリッドは2016年11月10日、埼玉県新座市で10月に発生した地下ケーブルの火災事故とそれに伴う停電についての緊急点検の結果をまとめた報告書を経済産業省に提出した。本格的な原因究明にはまだ時間がかかるが、同社はケーブル接続部で漏電が発生した結果、接続部が破裂してほかのケーブルに延焼したと推測している。

東京電力パワーグリッドの調べによると、事故が発生したのは10月12日の14時49分。場所は新座市野火止7丁目付近の地下を走る洞道(どうどう:多数の電力ケーブルが通るトンネル)。ここには「黒相」「赤相」「白相」の3本のケーブルで構成する送電線が6組通っている。6組の内訳は豊島変電所につながる城北線の1番~3番と、練馬変電所につながる北武蔵野線の1番~3番。このうち、城北線3番の黒相ケーブルに異常が発生した。

その後、洞道で火災が発生し、15時30分には練馬変電所が停電。8分後に電力の供給が再開したが、同時刻に豊島変電所の先にある池袋、常盤台、北新橋、南新橋の4変電所が停電。送電ルートを切り替えて10分後にはほとんどの地域で電力の供給が再開したが、一部地域では16時33分まで停電が続いた。火災の鎮火にはかなり時間がかかり、消防が鎮火宣言を出したのは翌日の0時21分だった。

図 今回の事故が発生した地点と、影響が及んだ変電所

図 今回の事故が発生した地点と、影響が及んだ変電所

出所 東京電力パワーグリッド

鎮火後に点検したところ、城北線3番の黒相ケーブルの接続部が内側から破裂している形跡を確認したという。ほかのケーブルには、内側から破裂した形跡がないことから、このケーブルの破裂が火災の発端になったと東京電力パワーグリッドは推測している。破裂の原因としては、接続部の漏電が考えられるとしている。ケーブルは温度変化によって伸び縮みする。その影響が接続部に加わって、漏電につながった可能性も考えられるという。

図 事故後の城北線3番の黒相ケーブル。内側から破裂しているように見える

図 事故後の城北線3番の黒相ケーブル。内側から破裂しているように見える

出所 東京電力パワーグリッド

破裂したケーブルは「OF(Oil filled)ケーブル」と呼ぶ古いタイプのものだった。敷設してから35年経っていたという。OFケーブルとは、絶縁にオイルと紙を利用するケーブルだ。OFケーブルの中心には絶縁用のオイルが流れているパイプがあり、それを囲むように電気が流れる導体がある。その外側は絶縁用の紙が厚く巻いてある。絶縁用の紙には中心のパイプからオイルが染み出すようになっている。東京電力パワーグリッドは、ケーブルが破裂した際に絶縁用のオイルが吹き出し、ほかのケーブルへの延焼を招いたと推測している。

現在、東京電力パワーグリッドが新たに敷設するケーブルには「CVケーブル(Cross-linked polyethylene insulated Vinyl sheath cable:架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル)」というケーブルを使っている。絶縁にポリエチレンを利用するもので、オイルを流す必要がない。東京電力パワーグリッドは、今回の事故で破損した地点を含む7.4kmの区間のケーブルをCVケーブルに張り替える方針を示している。予定では北武蔵野線の2回線が2017年6月に復旧し、ほかの回線は2019年度に復旧することになっている。

ほかの区間の防災対策も進める。今回事故を起こしたOFケーブルが敷設してある区間には自動消火設備を整備するか、防火シートで被覆する。この工事は2019年度末までに完了させるとしている。それまでの暫定対策として、該当区間に消火ボールなどを設置する。これは2016年12月末までに済ませる。


■リンク
東京電力パワーグリッド

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