日立オートモティブシステムズは2016年12月26日、11種類の運転支援機能を実装した電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)を開発したと発表した。このECUを組み込んだ実車を同社のテストコースで試走させて、すべての機能が正常に働くことも実証済みだという。2017年7月に発売することを目指して、さらに改良を重ねていくとしている。
図 日立オートモティブシステムズが開発したECU。大きさは142mm×202mm×37mm
出所 日立オートモティブシステムズ
このECUに向けた技術の開発は2014年度以前から始まっていた。このECUが搭載する機能の中で、2014年度以前に開発したものは5つ。1つ目は「ブラインドスポット検知システム」。自動車の後方の両側に付いているレーダーを利用して、運転から見ると死角となる部分に障害物や後続車両が入ったら検知し、運転者に知らせる機能だ。
2つ目は「半自動駐車」。運転者が駐車したい場所を指定したら、自動的に駐車する機能。並列駐車、縦列駐車両方に対応できる。駐車動作中、運転者はシフト操作を除いては何もする必要がない。
3つ目は「車線維持システム」。高速道路走行中に、カメラで車線を認識し、自動でステアリングを制御して自動車が車線から外れないようにする機能だ。
4つ目は「自動緊急ブレーキ」。カメラで前方の障害物を認識し、警告音を発して運転者の注意を喚起させる。衝突の危険がある場合は自動的にブレーキを制御して、自動車を減速、停止させる。
5つ目は「先導車追従走行」機能。高速道路走行中に、前方の車両と一定の間隔を保ちながら、運転者が設定した速度で走る続ける機能だ。
2015年度にはさらに3つの機能を開発した。1つ目は「高速道自動運転」機能。これは2014年度までに開発した車線維持システムと先導車追従走行機能を連携させたもの。高速道路で車線を維持しながら自動的に走行を続ける機能だ。
2つ目は「速度適応制御」機能。これは自動車が備えるカメラに、高速道の速度標識を認識させる機能。標識を認識し、制限速度を検知したら、自動車の速度を調節する。自動車が制限速度を下回る速度で走行していた場合、速度標識通過後に加速して、制限速度上限で走行する。反対に制限速度を上回っている場合は、速度標識到達前に制限速度に落として走行を続ける。
3つ目は、「運転者主導の自動車線変更」機能。高速道路を走行しているときに、運転者が方向指示器を操作したところで、自動的に車線を変更する機能だ。車線変更時は周囲の安全をセンサーなどで確かめながら、自動車を制御する。周辺に障害となる車両がある場合は、車線変更を止め、車線変更ができないことを運転者に知らせる。
2016年度には3つの機能を開発した。これで、今回発表したECUが備える機能が揃うことになる。1つ目は「渋滞時運転支援」機能。高速道路の渋滞の中で走行しているときに、低速で進む先行車を自動的に追従する機能。先行車を追従することで、車線がない場所でも列を作って走行できる。例えば、高速道路の料金所前後でも自動走行が可能だ。
2つ目は「低速車追い越し」機能。高速道路を走行しているときに、低速で走行している先行車を自動的に追い越す機能だ。先行車両が自車の設定速度よりも低い速度で走行していることを検知したところで、自動的に追い越し動作を始める。先行車を追い越して、安全が確認できたところで元の車線に戻る。
3つ目は「システム主導の自動車線変更」機能。地図情報から高速道の車線数の変動や分岐地点の情報を取得し、走行中の車線と取得した情報を照合して、必要に応じて自動で車線を変更する機能だ。
現在、日立オートモティブシステムズはプロトタイプのECUを搭載した実験車両で試走を繰り返し、2017年7月発売を目指して機能改良を進めている。
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日立オートモティブシステムズ