三菱マテリアル電子材料事業カンパニーは2017年1月30日、無線通信機器を利用したサービス開発に取り組む企業を対象に「アンテナ設計の最適化ソリューション」の提供を始めた。機器の設計や、機器の設置場所として最適なものを提案し、無線ネットワーク全体の通信性能を最大化させるための支援をする。
三菱マテリアルによると、IoTなど、無線通信技術を使う機器が急増している昨今、「IoT分野に進出したいが、アンテナ設計の知識がないので、最適な設計を提案してほしい」という声が多くあるという。また、機器の小型化が進んだ結果、「小型機器内の狭いスペースで、無線通信性能を改善し、優れた性能を発揮させたい」という声や、「ユーザーが使用する機器では金属やプラスチックなどの素材を使っているが、これらの素材による無線通信性能への影響度合いや、製品の構造、部品レイアウトの改善によって通信への悪影響を改善する方法を知りたい」という要望もあるという。
今回提供を開始したソリューションでは、電波暗室を利用して、機器が発した電波がどのように広がっていくのかを計測し、結果を2D/3D画像で提示するなどのなどのサービスで、無線通信性能を最大限発揮するための機器の設計や、機器の設置場所について提案していく。
図 電波暗室(左)と、提案によって電波の届く範囲が広がるという例(右)
出所 三菱マテリアル
このソリューションの提供対象は、400MHz~5GHz帯で通信する技術と、その技術を利用した製品。スマートメーターやHEMSなどに限らず、無線LAN、Bluetooth、GPS、LTEなどといった技術で通信する機器が対象となる。
図 「アンテナ設計の最適化ソリューション」の提供範囲
出所 三菱マテリアル
LTEなどの携帯電話に利用する電波を評価する設備も完備している。「リバブレーション試験装置」というもので、電波を反射反響させる密室内に、試験機器からの電波を受信するアンテナを立てたものだ。この中では、W-CDMA、GSM、LTEといった携帯電話通信技術だけでなく、Bluetooth、無線LANといった技術を採用した機器の評価が可能だ。
図 リバブレーション試験装置の模式図(左)と、実物(右)
出所 三菱マテリアル
また、Bluetoothヘッドセットについては人体が電波を遮蔽するため、その影響を評価し改善法を提案する。評価のために人体の頭部を模したモデルも用意している。このモデルを使うことで、人体が電波を遮蔽することを考慮しながら、電波の到達距離を最長化するための設計を考える。
図 人体の頭部を模したモデル。人体が電波を遮蔽する様子を再現するために使う
出所 三菱マテリアル
このように、三菱マテリアルは今回、本格的な計測設備を揃えて、ソリューションの提供を始めた。これだけの計測設備を揃えられる企業はあまりないだろう。スマートメーターなどの無線通信品質に悩んでいる企業には、一度試してみることをお薦めしたい。
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三菱マテリアル