京セラコミュニケーションシステム(KCCS)は2017年2月27日、IoT端末向けの無線通信サービス「SIGFOX」の提供を開始した。SIGFOXはLPWA(Low Poer Wide Range)と呼ぶ通信方式の1種。通信免許が不要な920MHz帯の無線を利用して、最大で数十kmの通信を実現する。通信速度は100ビット/秒で、上り通信のみの対応だが、通信に必要な電力量が少なく、小さな電源しか搭載できないIoT端末に向く通信方式として注目を集めている。京セラコミュニケーションシステムは、2016年11月に、日本でSIGFOXの通信サービスの提供を始めることを予告していた(関連記事)。
図 SIGFOXのロゴマーク
出所 京セラコミュニケーションシステム
サービス開始当初は東京23区内の一部の地域でサービスの提供を始め、通信エリアを順次拡大していいく。2017年3月末までには東京23区と川崎市、横浜市、大阪市にエリアを拡大し。2018年3月末までには政令指定都市を含む、全国の36の大都市をエリアに収める。2020年3月末までには日本全国で通信サービスを提供する計画だ。
通信料金は、利用者が接続したい端末の数や、それぞれの端末の通信頻度で決まる。台数が多く、頻度が少なければ端末1台当たりの通信費用は安くなる。京セラコミュニケーションシステムは、最安値のケースでは端末1台当たりの通信費用が年額100円未満になるとしている。
京セラコミュニケーションシステムは、サービス開始に合わせて日本でのSIGFOXサービスに対応する通信モジュールやセンサー機器を公開した。現在のところ、通信モジュールが2製品、センサー機器が1製品となっている。
図 京セラコミュニケーションシステムが公開した日本におけるSIGFOX対応機器。左はSMKのSIGFOX通信モジュール「「WF923シリーズ」で、中は村田製作所のSIGFOX通信モジュール「Type1NQ」、右はフランスAxible Technologies社の通信機能付きセンサー端末「Sens'it」
出所 京セラコミュニケーションシステム
対応センサー機器の指定を受けているフランスAxible Technologies社の「Sens'it」は、SIGFOX通信機能を持ち、温度、湿度、照度、磁気、加速度、ジャイロ、接点の7種類のセンサーを内蔵している。室内の温度監視やドアの開放検知、消灯忘れの検知などにそのまま使える。
さらに、SIGFOX対応クラウドサービスとして、Kiiの「Kii Cloud」、トレジャーデータの「Treasure Data Service」を挙げている。どちらも、IoT端末が送ってくるデータを蓄積し、分析する機能を提供する。
また、京セラコミュニケーションシステムはSIGFOXサービス開始に合わせて、SIGFOXを利用したパートナー企業によるサービスの提供も始まることを明らかにした。1つ目はオプテックスによるコインパーキング向け車両検知システム。マイクロ波と、超音波を発し、それぞれの反射を検知することで、駐車場に自動車があることを検知し、駐車状況をSIGFOXでクラウドに送信するシステムだ。従来の車両検知システムのように、駐車場のアスファルトの下にループコイルセンサーを設置する工事が不要になるため、安価かつ簡単に導入できるという。
もう1つは、アイ・サイナップが提供する温度監視システムだ。宅配ピザチェーン「ナポリの窯」で稼働を開始する予定。厨房の冷蔵庫、冷凍庫、作業空間の温度情報をセンサーで検知して、SIGFOX経由で15分ごとに温度情報をクラウドに送信する。緻密に温度管理することで、ピザ生地や材料の品質低下を防ぐ。
また、実験中のシステムとして、旭光電機による厨房にある機器の温度を管理するシステムも紹介している。厨房内の機器の温度変化や、電動モーターの震度王などを遠隔監視することで、機器の保守、メンテナンスの効率向上を実現するものだ。通信にSIGFOXを利用することで、導入コストと運用コストを削減できたとしている。
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