ソラコムは2017年7月7日、IoT機器向けデータ通信サービス「SORACOM」に、LPWA(Low Power Wide Area)通信方式の一種である「SIGFOX」を利用するサービス「SORACOM Air for Sigfox」を加え、サービス提供を始めたと発表した。同社がLPWAをSORACOMサービスに取り入れるのはLoRaWANに続いて2例目だ。
SIGFOXはLoRaWANと同じ920MHz帯で通信する無線通信方式。LoRaWANは利用者が自身の手でゲートウェイなどの基地局を設置して通信エリアを作れるが、SIGFOXは京セラコミュニケーションシステムが各地に設置する基地局を利用する形態を採る。利用者は京セラコミュニケーションシステムに通信料金を支払う必要があるが、自身で通信エリアを作る必要はなくなる。京セラコミュニケーションシステムは2017年2月にSIGFOXサービスの提供を始めて以来、通信エリアを順次拡大している。2018年3月には全国主要都市で利用可能になり、2020年3月にはエリアが日本全国に広がる予定だ。
SORACOM Air for Sigfoxでは、すでに提供している「SORACOM Air for セルラー」や「SORACOM Air for LoRaWAN」と同じように、SORACOMの管理コンソールやAPI(Application Programming Interface)から、SIGFOXでつながった多数のIoT端末の通信状態を一括で管理でき、通信中断などの操作も可能になっている。
また、SORACOMが提供するオプションサービスも利用可能だ。SORACOMのネットワークから顧客が指定するサーバーをインターネット経由の暗号化通信でつなぐ「SORACOM Beam」、SORACOMのネットワークからAmazon Web ServicesやMicrosoft Azureなどのパブリッククラウドにデータを転送する「SORACOM Funnel」、SORACOMのクラウドにIoT端末からのデータを蓄積し(40日間まで)、そのデータをグラフなどの形で表示する「SORACOM Harvest」の3種類のオプションサービスを利用できる。
図 SORACOM Air for Sigfoxのネットワーク構成
出所 ソラコム
SORACOM Air for Sigfox対応機器もすでに用意している。フランスAxible Technologies社の「Sens'it」は、温度、湿度、照度、磁気、加速度、ジャイロ、接点の7種類のセンサーを内蔵している。室内の温度監視やドアの開放検知、消灯忘れの検知などに利用できる。
スイスSTMicroelectronics社の開発者向けボード「STM32L0 Discovery kit LoRa」は、LED、スイッチ、USB端子のほか、Arduinoに接続する端子を持っている。組み合わせることで、IoT端末のプロトタイプを短期間で開発できる。
オプテックスの「ドライコンタクトコンバーター」は、接点で通電したことを検知する接点出力センサーを接続することで、通電、停止をSIGFOXネットワークを通して通知する。
以上3つの対応機器のうち、STMicroelectronics社の開発者向けボードを除く2点はすでに販売を開始しており、SORACOMの管理コンソールから1個単位で購入できる。販売価格は、Sens'itが1台8478円で、ドライコンタクトコンバーターが1台3万9800円。この価格は、機器の価格だけでなく契約事務手数料、SORACOM Air for Sigfoxの1年間の使用料金、SIGFOX通信料金を含んでいる。さらに、SORACOM Beam、SORACOM Funnel、SORACOM Harvestの利用料金(1カ月に10円分まで)も入っている。
SORACOM Air for Sigfoxを2年目以降も利用するには契約更新が必要になる。更新料金は1440円。これでSORACOM Air for Sigfoxと、SIGFOXの通信サービスを1年間利用できる。契約は1年単位となる。
またソラコムは新しいオプションサービス2種類の提供を始めた。1つ目はSORACOMのネットワークを通るパケットに対して解析やミラーリング、リダイレクションの処理を加えることを可能にする「SORACOM Junction」だ。
解析機能では、パケットを解析してアプリケーションを判別したり、バイト数、パケット数などを検知し、統計情報をレポートの形で提供する。この情報から、IoT端末それぞれの通信先や、通信内容などが明らかになる。
ミラーリングはパケットのコピーを作成して、顧客が指定するサーバーに送信するサービス。コピー送信先としてトラフィック解析アプライアンスなどを指定することで、IoT端末が攻撃者に乗っ取られて、悪意のある通信をしていないかどうかを調べることが可能になる。
リダイレクションを利用すると、パケットが顧客指定のサーバーを経由するように、通信経路を変更することができる。ソラコムは一例としてトラフィック制御サーバーを利用する例を挙げている。そのサーバーを通すことで、特定アプリケーション向け通信の帯域を絞り、指定したパケットを優先して通過させるといった制御が可能になる。
図 SORACOM Junctionが提供する3つの機能
出所 ソラコム
SORACOM JunctionはPublic Betaとして提供を始めている。Betaとあるが、商用でも問題なく利用できるという。利用料金は基本料金が1時間当たり15円で、このサービスのためにパケットをルーティングするVPG(Virtual Private Gateway)の利用料が1時間当たり300円。このVPCで、SORACOM Canal、SORACOM Direct、SORACOM Doorとの連携機能を利用できる。SORACOM Canalの利用に用途を絞ったVPCは1時間当たり50円で利用できる。また、パケット解析機能を利用すると1時間当たり100円かかる。ただし、この料金でSIMカードにして1万枚までの回線のパケットを調べることができる。
ソラコムが今回提供を始めたもう1つのサービスが「SORACOM Inventory」だ。このサービスは大量に配置したIoT端末の稼働状況監視、設定変更、機器再起動などのコマンド実行を可能にするものだ。SORACOMではIoT端末に通じる回線を一括管理する機能を提供しているが、SORACOM Inventoryを利用することで、その先につながっているIoT端末も一括管理することが可能になる。
図 SORACOM Inventoryを利用すると、IoT端末までの回線だけでなく、IoT端末自体の管理も可能になる
出所 ソラコム
従来、IoT端末の稼働状況確認や設定変更、コマンド実行を実現するには、専用のシステムを開発する必要があった。今回ソラコムが提供するSORACOM Inventoryでは、Open Mobile Alliance (OMA)が標準化した業界共通プロトコル「OMA Light Weight M2M(LWM2M)」を利用することで、機能を実現した。
このサービスを利用するには各IoT端末にLWM2Mのエージェントソフトウェアをインストールする必要がある。エージェントソフトウェアについては、ソラコムがLinux対応のものを2種類提供する。C言語で開発したものと、Javaで開発したものだ。エージェントに指示を出すサーバー側の機能はソラコムが開発したものを提供する。ユーザーはサーバーを設置するなどの準備をすることなく機能を利用できる。
SORACOM Inventoryは、一部ユーザーに向けて「Limited Preview」という形で提供する。利用を希望する企業は、利用目的、使い方、導入時期などを通知して申請を出す必要がある。ソラコムが申請内容を精査し、順次サービスを提供するとしている。
■リンク
ソラコム(SORACOM Air for Sigfox)
ソラコム(SORACOM Junction)
ソラコム(SORACOM Inventory)