日本郵便と本田技研工業は2017年3月23日、電動車両を利用した郵便配達と社会インフラ整備に向けた協業の検討を開始し、覚書を交わしたと発表した。現在のところは検討を開始した段階で、電動二輪車を活用した実証実験の開始時期などはまったくの白紙の状態だが、協議が進めば現行の「赤バイク」から電動二輪車へ移行することになる。
図 現在、日本郵便が配達に活用しているバイク。赤を基調としたカラーリングが大きな特徴
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今回の覚書では、3つの実証実験に向けて検討を始めるとしている。1つ目は郵便配達業務に電動二輪車等を使用する実証実験。今後、厳しくなる一方の排ガス規制の対象とならない電動二輪車を使用することで、郵便配達業務を長く続けられる体制作りを目指したものだという。
2つ目は、郵便局に充電ステーションを導入して運用する実証実験。配達に使用する予定の電動二輪車に充電するだけでなく、一般にも充電ステーションを公開する姿勢を見せている。充電ステーション機能を通じて郵便局がより利便性の高い「人々の集う場所」となることを目指している。
3つ目は配達車両を管理するテレマティクスサービスを活用した実証実験。これには本田技研工業が二輪車や軽自動車での移動に向けて開発したシステム「Honda Biz LINC」を利用する。Honda Biz LINCはGPSを内蔵したスマートフォンやタブレットを通して、運転者に近道などの情報を伝えるシステム。クラウドでHonda Biz LINCが動作しているスマートフォンやタブレットを管理する機能を備えており、管理者が車両の現在位置を把握することなどが可能になる。日本郵便はHonda Biz LINCを利用して、配達車両の利用効率を高め、安全に運用することを目指すとしている。
郵便配達用の電動二輪車が走り始める時期が気になるところだが、現在は郵便配達に利用することを考えた上で、どのような仕様の車両が必要なのかというところから検討しているので、使用する車種も決まっていないのが現状だ。
図 本田技研工業が公開している「EV-Cub」のコンセプトモデル
出所 本田技研工業
本田技研工業は2010年12月にスクーター型の電動二輪車「EV-neo」のリース販売を開始しているほか、2009年の「第41回東京モーターショー」に「スーパーカブ」をモチーフにした電動二輪車「EV-Cub」のコンセプトモデルを出展するなど、電動二輪車については開発を続けている。2016年2月24日の八郷隆弘代表取締役社長のスピーチでは、2018年をめどに、EV-Cubのコンセプトモデルを基にした量産車「EV-CUB」を日本で発売することを明言している。EV-Cubはまだコンセプトモデルの段階なので、細かい仕様は明らかになっていないが、今回の日本郵便との実証実験に向けた検討の段階で、EV-Cubの仕様について注文が付く可能性も考えられるだろう。