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日本酒造りにもIoTの波が来た! もろみの温度を検知し無線でデータを送信するシステムが登場

2017/04/07
(金)
SmartGridニューズレター編集部

ラトックシステムは、酒造業界に向けて無線通信機能付きの温度センサーを利用した温度監視システムを開発したと発表した。

ラトックシステムは2017年4月6日、酒造業界に向けて無線通信機能付きの温度センサーを利用した温度監視システムを開発したと発表した。2017年5月中旬から提供を始める。販売は酒造業界向け製造、販売システムで大きな実績を持つハートコンピューターが担当する。

ラトックシステムが今回開発したシステムは、清酒造りの工程の中でも厳格な温度管理が必要な「酒母造り」や「もろみ造り」の工程に向けたものだ。酒母造りは、糖分をアルコールと炭酸ガスに分解する役目を果たす酵母を増やす工程だ。雑菌などが入り込むことを防ぐために、特定の温度を保つ必要がある。

もろみ造りでは、仕込みタンクに酵母、麹、蒸米、水を入れる。これで麹が蒸米のデンプンを糖に変化させ、酵母が糖をアルコールと炭酸ガスに分解するのを待つ。この過程で酵母が熱を放出するが、発熱量が多くなると清酒に雑味が加わってしまう。酵母を働かせながら、雑味を抑えるために、厳格な温度管理が必要なのだ。

このシステムの中心となるのは、無線通信機能付きの温度センサーと、温度の変化を記録し、グラフなどの形でその推移を確認可能にするWindowsアプリケーション「もろみ日誌」だ。温度センサーとWindowsパソコンはロームが開発した独自の通信方式Wi-SUNで通信する。この通信方式は920MHz帯を使う。パソコンにはセンサーと通信するためにUSB接続の通信アダプタを取り付けておく必要がある。(5月26日訂正:後日、再取材したところ、Wi-SUNを使っていることが判明しました)

図 ラトックシステムが開発した温度監視システムの構成図

図 ラトックシステムが開発した温度監視システムの構成図

出所 ラトックシステム

このシステムで使用する温度センサーは、±0.3℃の精度で温度変化を検知する。基本的には1時間ごとにもろみや室温などを計測して、その値をWindowsパソコンに送信する。Windowsアプリケーション「もろみ日誌」は温度変化の推移を表示するだけでなく、酒造業界で品質管理に使う「BMD曲線」や「A-B直線」も表示する。記録したデータは印刷したり、CSV形式で保存することも可能だ。また、設定した温度の範囲を超えたらメールを送信するなどの手段で管理者に警告する機能も持つ。

Windowsアプリケーション「もろみ日誌」はAmazon Web Services(AWS)と連携する機能も持つ。記録したデータをAWSに送信し、AWSでデータをバックアップしながら、設定した温度の範囲を超えたら、専用アプリケーションをインストールしたスマートフォンにプッシュ通知することも可能になる。また、スマートフォンでもろみの表面を撮影した画像をAWSに転送することで、Windowsアプリケーション「もろみ日誌」でももろみの状態を示す画像を確認できるようになる。

図 Amazon Web Servicesと連携させるとスマートフォンへのプッシュ通知なども可能になる

図 Amazon Web Servicesと連携させるとスマートフォンへのプッシュ通知なども可能になる

出所 ラトックシステム

センサーの無線は、見通しで最大250mの距離まで届く。そして、無線通信機能付きセンサーは単3アルカリ乾電池でおよそ90日使用できる。注文を受けたら、ハートコンピューターのエンジニアが現地に向かい、センサーの設置、アプリケーションのインストール、その他設定などすべての準備を整えてくれるという。ラトックシステムは、酒造業者と密接に情報を交換しているハートコンピューターから利用者の要望を聞き取り、さらに機能を追加していく方針を示している。


■リンク
ラトックシステム
ハートコンピューター

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