ヤンマーは2017年5月23日、使用済みの食用油から得た燃料で動作するコージェネレーションシステム「CP25BDZ-TC」を開発したと発表した。7月1日から注文受付を始める予定。使用済みの食用油は「バイオディーゼル燃料」として、一部の大都市でバスやトラックの燃料として使用している例がある。しかし、燃料精製設備を十分にメンテナンスできていないと、バスやトラックの運転中に不具合が発生する。この問題が足を引っ張って、使用済み食用油をバイオディーゼル燃料として利用する動きはなかなか進んでいない。自治体や企業、飲食店は使用済み食用油の処理に頭を悩ませている。
図 ヤンマーが開発したコージェネレーションシステム「CP25BDZ-TC」。使用済み食用油から得た燃料で動作する
出所 ヤンマー
ヤンマーは企業などと連携してバイオディーゼル燃料を使用した定置型発電システムの実証実験を繰り返してきた。実験で得た知見などを活かして、今回使用済み食用油の特性に合わせたコージェネレーションシステムを商品化した。
CP25BDZ-TCは、脂肪酸メチルエステル(Fatty Acid Methyl Ester:FAME)とストレートベジタブルオイル(Straight Vegetable Oil:SVO)の2種類の油を燃料とする。FAMEは植物油にメタノールを添加してものをエステル交換反応させ、グリセリンなどの不純物を除去することで得られる。精製に手間がかかるが、軽油と同等の燃焼性能を発揮するため、バイオディーゼル燃料としては利用しやすい。
一方、SVOは精製に手間はかからないが利用しにくい燃料だ。植物油から不純物である固形分を分離除去するだけで得られる。しかし、常温下では粘り気が強く、その粘性は軽油の10倍ほどにもなる。そのため、用途は少なかった。ヤンマーは今回、SVOを貯蔵するタンクを加熱することで粘度を下げ、常温環境下では粘り気が強いという問題を解決し、燃料として利用することに成功した。
CP25BDZ-TCの発電能力は25kW。回収熱量は34kWで、85℃の温水を取り出せる。発電効率は35%で、排熱回収率は48%。総合効率は83%に達する。ヤンマーは小規模な店舗や工場、施設などに設置することを想定している。より大きな出力を求める顧客には、この製品を複数台設置して出力を向上させる。さらに、ヤンマー独自の遠隔監視システム「RESS(Remote Energy Support System)」で機器ごとの運転状況をヤンマーの中央監視センターで監視し、運転時間や発電電力量などを記録する。不具合発生時はエラー情報を表示し、必要に応じてサービス担当者を現場に派遣し、対応するとしている。本体価格は1500万円(税、工事費用別)。
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ヤンマー