デンソーは2017年5月26日、冷凍車向けの車載用冷凍機にリチウムイオン蓄電池を搭載したものを開発したと発表した。ヤマト運輸がこの製品を車載用冷凍機として採用し、導入を始めている。
図 新開発の冷凍機を搭載したヤマトの冷凍車(左)と、冷凍機本体(右)
出所 デンソー
エンジンで車両が走行している間は、エンジンが発電した電力で冷凍機を動作させ、車両停止時は蓄電池の電力を使用する。アイドリングストップによる一時的なエンジン停止時も蓄電池からの電力で冷凍機を動作させる。
今回デンソーが開発した冷凍機は、蓄電池を従来使用していた鉛蓄電池からリチウムイオン蓄電池に置換した。これにより、3つの利点が得られた。1つ目は冷凍機本体の小型軽量化。鉛蓄電池を使用していたものは冷凍機が大きく、その重量は130kgにもなっていた。蓄電池をリチウムイオン蓄電池に入れ替えることで、重量を50kgまで削減することに成功し、本体も小型化できたという。軽量化によって、搭載車両の燃費向上が見込め、小型化によって冷凍庫スペースを拡大し、より多くの荷物を積載できるようになった。
2つ目は、充電時間の短縮、鉛蓄電池に比べておよそ半分の2時間以内で充電が可能になった。鉛蓄電池の利点の1つとして、メモリー効果が発生しないので、自由に継ぎ足し充電が可能という点が挙げられるが、リチウムイオン蓄電池でもほぼ同じように継ぎ足し充電ができるという。ちなみに、新開発冷凍機が搭載するリチウムイオン蓄電池の蓄電容量は1.4kWh。鉛蓄電池を使用した従来品とほぼ変わらない値だという。そして、充電スポットで専用コンセントを接続して充電するところも従来品と変わらないという。
3つ目は、蓄電池の寿命の延長。従来の鉛蓄電池はだいたい3年ごとに交換が必要だったが、リチウムイオン蓄電池を採用した新製品では、およそ13年間は電池の交換が必要ないという。
現在、宅配用冷凍車はガソリンエンジンで動くものばかりだ。しかし、いずれは電気自動車、燃料電池車に移行していくと考えられる。デンソーはそうなったときの冷凍機については、「冷凍機単体ではなく、車両全体で熱設計、電力設計を見直す必要があるだろう」としている。
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デンソー