日産自動車は2017年8月8日、同社が保有する蓄電池事業と蓄電池生産工場を中国の投資会社「GSR Capital」に譲渡する契約を締結したと発表した。この契約で日産自動車は、連結子会社であるオートモーティブエナジーサプライ株式会社、北米日産会社が保有するアメリカ・スマーナの蓄電池生産事業、イギリス日産自動車製造会社が保有するサンダーランドのバッテリー生産事業、そして追浜、厚木、座間の開発・生産技術部門の一部をGSR Capitalに譲渡する。各施設で働く従業員の雇用はそのまま維持する。そして、事業譲渡後の新会社の本社と開発拠点は日本に置く予定。
図 オートモーティブエナジーサプライが販売している電気自動車向け車載蓄電池
出所 オートモーティブエナジーサプライ
この決定について日産自動車の広報担当者は、「世界初の量産型電気自動車(EV)としてLEAFを売り出した2010年当初は、自動車向けにリチウムイオン蓄電池を作ってくれるメーカーがなかったので、日産自動車自身の力で開発、製造しなければならなかった。今はハイブリッド車も広く普及し、世界的にはEVの販売台数も急激に伸びている。自動車向けの蓄電池を作ってくれるメーカーも増えた。自前で蓄電池の開発、製造機能をすべて持っていてもメリットがないと判断した」としている。つまり車載用蓄電池のメーカーが増えたので、蓄電池の開発、製造はそれを專門とする業者に任せ、日産自動車はEVの開発、生産に専念するということだ。とはいえ、先進的なEVの開発に必要な蓄電池研究部門は日産自動車が引き続き保有する。
さらに、「GSR Capitalはオートモーティブエナジーサプライなど、今回売却する事業に積極的に投資していくとしている。GSR Capitalのネットワークを駆使して、蓄電池の拡販を図るともいう。日産自動車だけのために蓄電池を作っているよりも、多様な、そして多くの顧客に向けて蓄電池を販売していけば、高性能な蓄電池を安価で販売できるようになるだろう。今回の事業売却は日産自動車が抱えている蓄電池事業のさらなる成長を目指したものだ」としている。
日産自動車はすでに車載用蓄電池について、オートモーティブエナジーサプライに限らず、高性能で安価なものを提供してくれるメーカーを選ぶようになっているが、GSR Capitalの投資などで、オートモーティブエナジーサプライが魅力的な蓄電池を提案してきたら、真剣に採用を考えるとしている。
日産自動車は現在、オートモーティブエナジーサプライの株式のうち49%を保有するNECとNECエナジーデバイスから、株式を取得する交渉を進めている。全株式が日産自動車に集まった時点で、GSR Capitalに譲渡する予定。今回の事業譲渡は、規制当局の承認を受け、労働組合との協議を済ませた上で、2017年12月までに完了する見込みだという。
■リンク
日産自動車