富士通研究所は2017年12月4日、LPWA(Low Power Wide Area)の無線通信機能を備え、電池交換の必要がない世界最小のセンサー端末を開発したと発表した。Sigfox、LoRaWANなど920MHz帯を使用する無線通信技術なら、基本的にどの方式にも対応する。
図 下はセンサー本体。外形寸法は82×24×6mm。上はセンサーの中身。右端にはLPWA信号を送受信するアンテナが見える
出所 富士通研究所
今回開発したセンサー端末の基となったのは、同研究所が2015年3月に発表した小型のBlootoothビーコン端末。内蔵する太陽電池の電力のみで、Bluetooth Low Energy(BLE)を発信し続ける。もちろん電池交換は不要だ。消費電力量を節約するために、太陽電池で発電し、蓄電素子に充電した電力を、発電と消費の電力バランスを監視しながら調節しつづけている。これで、太陽電池のみで確実に起動し、電池を交換することなく動き続けるビーコン端末を実現した。
LPWAでは、少量のデータを多数の欠片に分割し、時間をかけてゆっくり送信することで消費電力を抑えながら、数km先までの通信を可能にしている。しかし、BLEのビーコンに比べるとデータ送信完了までに長い時間がかかる。富士通研究所によるとLPWAの通信1回には、BLEの通信にしておよそ1500回分に相当する電力が必要だという。
そこで、今回開発した端末では新開発の電源制御技術を投入した。回路に温度センサーを仕込み、その計測値によって電波送信のタイミングを変化させるというものだ。これは、回路を流れる電力の電圧が温度によって変化するという特性を利用したものだ。温度が低下すると電圧が下がり、無線通信回路を起動できなくなる。従来は電圧変動を防ぐために、発電した電力を貯める蓄電素子に容量の大きいものを用意するなどの対策を採っていた。
今回の技術では、LPWA無線回路の動作限界電圧を下回らない程度に電圧を管理しながら、電圧が最大となるタイミングで通信する。これにより、温度によって変化する無線回路の消費電力と、太陽電池の発電電力がバラついても問題なく動作を続ける。電圧変動対策として搭載する蓄電素子も、容量が小さいものを使えるようになるので、回路規模が縮小するという効果もある。
図 温度変化による電圧変化を検知し、電圧が最大に達するタイミングで通信する
出所 富士通研究所
富士通研究所は、試作した端末にSigfoxの通信機能を持たせて試験した。照度4000ルクスの環境で温湿度データを7km離れた基地局に直接送信できることを実証したという。このときは10分に1回のペースで7日間送り続けた。
この結果を受けて富士通研究所は、今回開発したセンサー端末の実証実験を進め、富士通のIoT基盤「FUJITSU Cloud Service K5 IoT Platform」や、富士通フロンテックの特定業務向けシステムで使用するセンサー端末として2018年度中に製品化することを目指すとしている。
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