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富士通研究所、びまん性肺疾患のCT画像を機械学習で分析して類似症例を検索する技術を開発

2017/06/27
(火)
SmartGridニューズレター編集部

富士通研究所は、びまん性肺疾患のCT画像から、過去の類似症例を見つけ出す技術を開発したと発表した。

富士通研究所は2017年6月23日、同社の中国法人である富士通研究開発中心有限公司と共同で、びまん性肺疾患のCT(Computed Tomography:コンピュータ断層撮影)画像から、過去の類似症例を見つけ出す技術を開発したと発表した。

現在のところ、初期の肺がんのように異常な陰影が1カ所に集中する症例については、自動で類似症例を検索する技術が存在するが、間質性肺炎や肺気腫などのびまん性肺疾患では、肺全体に異常な陰影が立体的に広がる。このような場合は豊富な知識と経験を持つ医師が異常陰影の立体的な分布を確認し、手作業で過去の類似症例を探すしかなく、診断に時間がかかっている。

図 びまん性肺疾患の場合、1枚のCT画像から見える異常陰影の位置が似ていても、肺全体で見ると異常陰影の分布がまるで異なるということが多い

図 びまん性肺疾患の場合、1枚のCT画像から見える異常陰影の位置が似ていても、肺全体で見ると異常陰影の分布がまるで異なるということが多い

出所 富士通研究所

富士通研究所は、熟練の医師がCT画像から過去の類似症例を探すときに、肺を末梢、中枢、上下左右という具合に立体的に領域を分割してそれぞれの領域の異常陰影の広がり方を調べていることに着目したという。そこで、コンピュータも医師と同様の方法でCT画像を調べられるように、境界がわかりにくい肺を画像解析で自動的に領域分けし、それぞれの領域内の異常陰影をAI(Artificial Intelligence:人工知能)で認識するようにした。これで、肺を立体的に見たときの異常陰影の広がり方が似ているCT画像を高精度で検索することが可能になったという。異常陰影候補を認識する部分は富士通研究開発中心有限公司と共同で開発したという。

具体的には以下のような流れで処理をする。まず、調査対象のCT画像を受けて、機械学習で異常陰影の候補を認識する。続いてCT画像が明瞭な部分から調べていき、中枢と末梢の境界線を順次推定し、肺を中枢と末梢の2領域に分割する。そして、体幹の軸に沿って、中枢と末梢のそれぞれの領域に存在する異常陰影の位置と数を調べ、位置と数を示すヒストグラムを作る。過去の症例についても同様の手法でヒストグラムを作ってあるので、ヒストグラムを照合することで、類似症例を素早く検索できる。

図 肺を末梢と中枢に自動的に分割し、それぞれの異常陰影の位置と数をヒストグラムにする

図 肺を末梢と中枢に自動的に分割し、それぞれの異常陰影の位置と数をヒストグラムにする

出所 富士通研究所

国立大学法人広島大学大学院医歯薬保健学研究科放射線診断学研究室の粟井和夫教授との共同研究で、今回開発した技術を使って類似症例を検索したところ、85%の確率で医師が正解と定めた画像が入っていたという。富士通研究所はこの技術を活用することで、従来は熟練の医師が時間をかけて類似症例をさがしていたところを、自動的に検索できるようになり、診断時間を最大でおよそ1/6に短縮できる可能性があるとしている。

また、この技術はびまん性肺疾患だけでなく、頭部CT画像、腹部CT画像、MRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像法)画像、超音波画像など、ほかの画像診断にも応用が可能と考えているという。富士通研究所は今後、様々な症例を対象に実証実験を続け、実用化を目指すとしている。


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富士通研究所

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