国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と大林組、川崎重工業は2017年12月11日、兵庫県神戸市のポートアイランド地域に水素を燃料とするコージェネレーションシステムプラントを完成させたと発表した。
図 完成したコージェネレーションシステムプラント
出所 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
これは、NEDO事業「水素社会構築技術開発事業/水素CGS活用スマートコミュニティ技術開発事業」の一環として実施する実証実験であり、プラントで作り出した電力と熱は周囲の病院や公共施設に供給する。水素を燃料として作り出した電力と熱を周辺施設に供給する試みを市街地で実施するのは、これが世界初になるという。各設備の試運転を終えた後、2018年1月下旬から実証実験を開始し、2月上旬から周辺施設への熱と電力の試験供給を開始する予定だ。
このプラントは、水素を燃焼させてガスタービンを回して発電する。さらにガスタービンからの高熱の排気で蒸気を作り、これを熱として周辺施設に供給する。水素で発電というと、近年は燃料電池の普及が進んでいる。燃料電池では、水素と電極触媒の化学反応で発電するが、今回のプラントでは水素を燃焼させてタービンを回して発電する。ちなみに、このプラントが備える水素ガスタービンと発電機は、およそ1MW(1000kW)の発電能力を備えているという。また、水素だけでなく、水素と天然ガスを混合したガスも燃料として使用可能だ。
発電した電力は近隣にある「神戸市立ポートアイランドスポーツセンター」「神戸市立医療センター中央市民病院」「神戸国際展示場」「ポートアイランド下水処理場」に供給し、発電時に発生した熱は神戸市立医療センター中央市民病院と神戸市立ポートアイランドスポーツセンターに供給する。
図 コージェネレーションシステムプラントの位置と、電力と熱を供給する施設の位置
出所 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
電力と熱を生み出す水素コージェネレーションシステムは、川崎重工業が開発した。同社はこの実証実験で、水素のみを燃料とした場合と、水素と天然ガスを混焼させた場合それぞれに対して、安定燃焼を継続可能とする技術の確立を目指す。さらに、コージェネレーションシステムの運用を通して、出力、回転数、排気温度、圧力などの各種データを収集して、安全に運転、運用できることを確認するとしている。
大林組は、コージェネレーションシステムが生み出す電力と熱の配分を管理する「統合型エネルギーマネジメントシステム」を大阪大学と共同で開発した。コージェネレーションシステムの発電量と発熱量、そして各施設が供給を受けている電力量と熱の量をそれぞれ監視し、データをクラウドに集積して分析することで、環境への影響を最小限に抑えながら、最高の経済効率でコージェネレーションシステムを運転できるように電力と熱の配分を制御する。実証実験では、このエネルギーマネジメントシステムが狙い通りに働くかという点も検証する。
図 コージェネレーションシステムプラントが発生させる電力と熱の配分は、統合型エネルギーマネジメントシステムが制御する
出所 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
水素は簡単に手に入る上、燃料電池で使っても燃焼させても水しか発生せず、CO2を発生させない。NEDOは水素の活用を進めるために、供給網構築などに必要な技術開発に取り組んでおり、今後も本格的な普及を目指して研究を続ける姿勢を見せている。