講談社、手塚プロダクション、NTTドコモ、富士ソフト、VAIOの5社は2017年2月22日、共同で「ATOMプロジェクト」を始めると発表した。プロジェクトの第1弾として、故手塚治虫氏が作り上げた漫画キャラクター「鉄腕アトム」をモデルとしたコミュニケーションロボットを発売する。
図 「鉄腕アトム」をモデルとしたコミュニケーションロボット
出所 手塚プロダクション、講談社
発売するコミュニケーションロボットは全高がおよそ44cmで、重量がおよそ1400g。頭部2軸、腕部6軸、脚部10軸の合計18軸の可動部位を備える。内蔵する電子基板は専用設計のボードとRaspberry PI 3(model B)を併用する。Raspberry PI 3(model B)はBroadcomの「BCM2837」SoCを搭載する。このSoCはプロセサコアとしてARMの「Cortex-A53」を4つ搭載する。64ビット命令セットである「ARMv8-A」に対応するプロセサコアだ。さらに、IEEE 802.11b/g/n準拠の無線LAN通信機能と、Bluetooth 4.1の通信機能を備える。
コミュニケーションロボットにはさらに92万画素のカメラと、モノラルマイクを1基、両眼を7色に光らせるLED、タッチセンサー、タッチパネル付きの2.4インチ液晶ディスプレイ、電源スイッチを搭載する。電源な内蔵のリチウムイオン蓄電池で、蓄電容量は5800mAh。付属のACアダプタを接続して充電する。
企画全体のプロデュースは講談社が担当する。講談社はまた、ロボットが発話する際に使用するコーパス(辞書)の作成も担当した。コミュニケーションロボットの外装のモデリング作業には、手塚プロダクションが全面協力。専用設計のボードなど電子部品の実装はVAIOが担当する。
富士ソフトは、ロボットを制御するOSの開発と、ロボットが内蔵するAI(Artificial Intelligence)の開発を担当した。富士ソフトのAIは、高齢者施設などへの導入実績があるコミュニケーションロボット「PALRO(パルロ)」で実績を積んだものだ。顔認識で12人までを識別する能力を持ち、人の表情の変化に瞬時に反応して人とコミュニケーションを交わす。
内蔵AIで対処できない会話には、NTTドコモが提供している「自然対話プラットフォーム」で対応する。NTTドコモが「しゃべってコンシェル」サービスの提供で培った技術を基盤としたものだ。曖昧な表現を含む話し言葉を受け取って、目的や意図を解釈し、事前に設定したシナリオに沿った言葉をを返す。Webページの外部情報などを拾ってきて、その情報を返すことも可能。NTTドコモによると、今回は自然対話プラットフォームのうち、「意図解釈」「シナリオ対話」「外部コンテンツ連携」の機能を使用するという。
意図解釈により、会話の文脈を読み取った柔軟な会話が可能になり、シナリオ対話により、事前に設定したシナリオに沿った会話を交わす。さらに、シナリオ対話の機能で、家族一人ひとりとの会話で得た情報、家族共通の話題をそれぞれ記憶し、後の会話に活用することが可能になる。認識した相手と、会話内容、口調の変化に合わせて、会話で記憶したことを共通の話題として発話するようになる。会話を重ねるほど、共通の話題が増えていき、より親密な会話ができるようになる。また、外部コンテンツ連携の機能を利用することで、天気予報やニュースなどを話題として提供するようになる。
図 NTTドコモの「自然対話プラットフォーム」によって実現する会話の例
出所 NTTドコモ
コミュニケーションロボットの販売は講談社が担当する。販売形態はロボットの完成品提供ではなく、部品を付録とした雑誌「コミュニケーション・ロボット 週刊 鉄腕アトムを作ろう!」の定期刊行となる。つまり、毎週雑誌を購入して、付録の部品を組み立て続けることで、完成する仕掛けになっているのだ。講談社は4月4日に第1号を発行し、2018年9月11日まで全70号を発行する。販売価格は創刊号が830円で、通常号が1843円。価格が2306円~9250円となる高価格号も発行する。全国書店で販売するほか、講談社は定期購読予約を受け付けている。
組み立てに自信がないという読者に向けて、「ATOM組み立て代行サービス」も提供する。組み立てはVAIOの安曇野工場が受け持つ。22日から「第1期」として1000体限定で予約受付を開始している。価格は21万2900円(税別)。発送は雑誌全70号発行後の2018年9月からとなる。
講談社は今回のコミュニケーションロボットはあくまで第1弾であるとしており、今後新たなロボットやAIを活用したボットなどのソフトウェアなどの提供を企画しているという。
アトムが手塚治虫氏の作品に初めて登場したのは1951年の「アトム大使」、その後「鉄腕アトム」の連載が始まった。物語の舞台は「21世紀の未来」。21世紀を迎えて16年が経過して、ようやくアトムが形になって姿を現した。そのアトムの眼に映る現実の21世紀が、手塚氏が夢に描いた21世紀よりも幸せなものであることを願いたい。
■リンク
「コミュニケーション・ロボット 週刊 鉄腕アトムを作ろう!」公式サイト
講談社
手塚プロダクション
NTTドコモ
富士ソフト
VAIO