現在、太陽光や風力、水力、バイオマス、地熱などによる再エネ発電は、①2018年度末の累計で7,183万kW(大型火力発電約70基分、見込み)となり、②2030年度末にはその倍近くの1億2,687万kW(同約126基分、予測)に達すると見られ、なお拡大する勢いである注1。
このように拡大する再エネ市場の進展に対応して、経済産業省は、①再エネの主力電源化に向けた更なる環境整備と、②電力の安定供給を確実に実現していくための電力システムの持続可能性の確保を両立させるため、新たに「再エネ主力電源化制度改革小委員会」と「持続可能な電力システム構築小委員会」を設置(図)し、具体的な検討を開始した(2019年8月27日)注2。設立の背景には、以下の要因が挙げられている。
図 新たに設置された2つの小委員会
出所 編集部で作成
- 2018年夏に発生した北海道胆振(いぶり)東部地震によるブラックアウトや、台風による送電線などへの被害によって、インフラのレジリエンス強化の重要性が再認識されたこと。
- 中東情勢の流動化により、エネルギー源の多様化と自給率向上の必要性が求められていること。
- パリ協定を契機とした国際的な脱炭素化への高まりを背景に、再エネの主力電源化に向けた環境整備を更に促進していく必要があること。
- 再エネの大量導入による電力ネットワークの分散化に加え、AIやIoTなどの技術による新たな電力ビジネスの創出(例:VPP)など、電力システムの在り方が大きく変わろうとしていること。
- 2020年の発送電分離も控え、確実に電力の安定供給を果たすシステムの持続可能性も重要となってきていること。
再エネの主力電源化と発電から送電、配電に至るまでの電力システムの再構築は、エネルギー政策全体の観点から検討する必要があるため、両委員会での審議が期待されている。
注2 https://www.meti.go.jp/press/2019/08/20190827004/20190827004.html