カルコパイライト太陽電池を使った発電モジュールの施工性や耐久性を確認
日揮株式会社(以下、日揮)とPXPがフィルム型カルコパイライト太陽電池を使った発電モジュールの実証実験を2025年4月に開始した、両社の親会社である日揮ホールディングス株式会社(以下、日揮HD)が2025年5月15日に発表した。実証では、同電池の施工性や耐久性を確認する。
図1 カルコパイライト太陽電池を使った発電モジュール
出所 日揮ホールディングス株式会社 プレスリリース・IR 2025年5月15日、「フィルム型カルコパイライト太陽電池を用いた発電実証実験を開始」
薄膜太陽電池の特性と実証の概要
カルコパイライト太陽電池は、半導体の材料として、シリコンの代わりに、Cu(銅)、In(インジウム)、Ga(ガリウム)、Se(セレン)を使用したもの。従来の結晶シリコンを使用したものと比べ、光を吸収しやすく、太陽電池を薄くできるという特徴がある。
両社の実証では、電気的に接続した複数のフィルム型カルコパイライト太陽電池を基材シート上に並べた発電モジュールを使用し、キロワット規模の発電を行う。こうした手法で薄膜太陽電池の大面積化を図る実証は国内で初だという。
発電モジュールは、日揮が産業関連施設の屋根向けに開発した「シート工法」を用いて、工場や倉庫などの折板屋根を模した屋外環境に施工した。同工法は、遮熱シートに薄膜太陽電池を載せたものを発電モジュールとして一体化し、グリッパーと呼ぶ金具で屋根に着脱可能な状態で固定するというもの。カルコパイライト太陽電池をはじめとする薄膜太陽電池が持つ、軽量、薄い、曲がるという特徴を損なわずに使用できる。
図2 屋根に設置した発電モジュール
出所 日揮ホールディングス株式会社 プレスリリース・IR 2025年5月15日、「フィルム型カルコパイライト太陽電池を用いた発電実証実験を開始」
同実証は、1年を目安に、横浜市内の日揮グループ所有施設内で実施する。薄膜太陽電池の大面積化におけるシート工法の適用可能性に加え、薄膜太陽電池(PXP)の振動や衝撃に対する有効性を確認する。また、発電量や耐久性といった実証データをシート工法および薄膜太陽電池の開発にフィードバックする。
現時点で、発電モジュールの面積あたりの重量が約2kgと軽量であるとともに、配線の削減で設置作業や配線作業を効率化したことで、作業員1人あたり1日100m²の施工が可能であることを確認したという。
カルコパイライト太陽電池をはじめとした薄膜太陽電池は、再生エネルギーの拡大が求められる中で、次世代電池として注目されている。
PXPは、国産フィルム型次世代太陽電池の研究開発と量産化に取り組むスタートアップ。カルコパイライト太陽電池に加え、ペロブスカイトと呼ばれる結晶構造を材料に使用するペロブスカイト太陽電池を重ねたタンデム型の太陽電池モジュールの研究開発も進めている。
参考サイト
日揮ホールディングス株式会社 プレスリリース・IR 2025年5月15日、「フィルム型カルコパイライト太陽電池を用いた発電実証実験を開始」
株式会社PXP PR TIMES 2025年5月15日、「フィルム型カルコパイライト太陽電池を用いた発電実証実験を開始」