プラスチック油化のためのケミカルリサイクル設備を竣工
ENEOS株式会社(以下、ENEOS)と三菱ケミカル株式会社(以下、三菱ケミカル)は、使用済みプラスチックから石油製品や化学製品などの原料となる油を製造するための設備を完成させた(図1)。従来の技術では難しかった使用済みプラスチックのリサイクルを可能にするという。茨城県神栖市の三菱ケミカルの茨城事業所に建設し、2025年7月2日には竣工式を開催した。同7月3日発表した。
図1 ENEOSと三菱ケミカルが建設したケミカルリサイクルプラント内にあるプラスチック油化の前処理工程用設備(左)、油化工程用設備(右)
出所 ENEOS株式会社 プレスリリース 2025年7月2日、「ENEOSと三菱ケミカル、プラスチック油化の開始に向けてケミカルリサイクル設備を竣工」
難しかった異なる種類が混ざったプラスチックも再製品化
ENEOSと三菱ケミカルは、プラスチック油化の事業化に向けて2021年から、そのための施設であるケミカルリサイクルプラントの開発に取り組んできた。今回、両社が竣工したケミカルリサイクルプラントでは、外部から調達した使用済みプラスチックを化学的に分解する油化処理を実行する。
プラスチック油化には、英Mura Technologyの超臨界水熱分解技術を活用する。同技術は、超臨界状態である高温、高圧の水を溶媒にプラスチックを分解するもの。プラスチックを分解しながら水に溶解することで、生成した油の再結合を水が抑制する。これにより、異なる種類の廃プラスチックが混ざっていても原料として使用できるほか、使用済みプラスチックから汚れなどを完全に除去して新品同等の品質で再生できるようにするという。
ケミカルリサイクルプラントで製造した油は、両社の石油精製装置に投入して石油製品やナフサを製造する。このうちナフサはナフサクラッカーに投入してエチレンやプロピレン、ベンゼンなどの基礎化学品とその誘導品を生産し、それらをプラスチック製品の製造に活用する。廃プラスチックの再製品化でサーキュラーエコノミーの確立につなげるとする(図2)。
図2 プラスチック油化事業のサプライチェーンイメージ
出所 ENEOS株式会社 プレスリリース 2025年7月2日、「ENEOSと三菱ケミカル、プラスチック油化の開始に向けてケミカルリサイクル設備を竣工」
同プラントは、持続可能な製品の国際的な認証制度の1つである「ISCC PLUS認証」の取得を予定している。取得後は、同プラントのリサイクル生成油を原料に使用した製品に環境価値を付与する。
参考サイト
ENEOS株式会社 プレスリリース 2025年7月2日、「ENEOSと三菱ケミカル、プラスチック油化の開始に向けてケミカルリサイクル設備を竣工」