雨天でも約10日間の停電に対応
大和ハウス工業株式会社(以下、大和ハウス工業)と大和リビング株式会社、ならびにエネルギー事業を展開する株式会社サンワ(以下、サンワ)の3社は、雨天時でも約10日間の停電に対応可能注1な「ネット・カーボンマイナス賃貸住宅」の実用化に向けた実証実験を開始する。
ネット・カーボンマイナスとは、CO2などの温室効果ガス排出ゼロを目指す「カーボンニュートラル」からさらに前進させ、実質的に(ネットで)吸収されるCO2などの温室効果ガスのほうが、排出量より多い状態を目指す画期的な取り組みで、「カーボンネガティブ」ともいわれる。
実証実験は、サンワが事業主となる群馬県前橋市駒形町の賃貸住宅において行われ、期間は2023年12月27日からの2年間の予定。
新電池システムとカーボンニュートラルLPガスを採用
大和ハウスグループでは、すでに脱炭素化を目指すZEH注2やZEH-M注3をはじめ、防災配慮型の太陽光発電システムや家庭用リチウム蓄電池などの開発・普及を進めている。
それらに加え、このほど実証実験が行われる賃貸住宅では「全天候型3電池連携システム」(図1)が導入される。図1に示すように、太陽光発電システムとエネファーム、家庭用リチウムイオン蓄電池を大和ハウス工業が開発した「切換盤」で連携させることで、停電時の電力と給湯を確保するとともに、通常時の光熱費を削減する。これによって、約10日間の停電に対応できる電力を確保する。
また、エネファームには「カーボンニュートラルLPガス」が利用される。原料採取から最終利用までのすべての過程で排出されるCO2を、植林など環境保全活動で差し引き実質「ゼロ」とみなしたもので、脱炭素化だけでなく、災害復旧への早期対応といったプロパンガスならではのメリットもある。
CO2排出量収支200%削減を見込む
大和ハウス工業では、これら新システム採用によって、当該賃貸住宅において一般的な賃貸住宅注4との比較で、CO2排出量収支200%削減注5を見込んでいる。実証実験では、新電池システムの稼働率や余剰電力量のデータ分析などを収集し、分析、評価を行う。
近年は吸収される温室効果ガスのほうが排出量より多い状態を目指す「カーボンマイナス」「カーボンネガティブ」の取り組みが各所でさまざまに進められている。この案件もその1つといえる。
図1 「全天候型3電池連携システム」が導入された実証実験のイメージ
出所 大和ハウス工業株式会社、大和リビング株式会社 プレスリリース 2023年9月5日、「■雨天時でも約10日間の停電に対応可能 ネット・カーボンマイナス賃貸住宅の実用化に向けた実証実験を開始」
注1:水道、ガスが使える場合。
注2:ZEH:Net Zero Energy House、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス。ゼッチ。断熱性・省エネ性能を高め、再生可能エネルギーなどにより、エネルギー収支ゼロを目指す住宅。
注3:ZEH-M:ZEHのマンション(M:Mansion)タイプ。ゼッチ・エム。
注4:国土交通省が公布した「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」で定められた、平成11(1999)年基準相当の外皮と標準的な設備を有する建物。
注5:一棟あたりの年間CO2排出量収支が14.91t(トン)から−14.99tとなり、29.9t削減。国立研究開発法人 建築研究所が提供する「建築物のエネルギー消費性能計算プログラム」を利用した理論値であり、実際のCO2排出量は利用方法などによって変動する。
参考サイト
大和ハウス工業株式会社、大和リビング株式会社 プレスリリース 2023年9月5日 「■雨天時でも約10日間の停電に対応可能 ネット・カーボンマイナス賃貸住宅の実用化に向けた実証実験を開始」