2025年度の再エネ市場は2兆円、2040年度に2.9兆円まで拡大
「2025年度における再生可能エネルギー発電システムの国内市場は2兆28億円」—。同市場を太陽光と洋上風力がけん引し、2040年度には2兆9,070億円にまで拡大する。こうした調査結果を株式会社富士経済(以下、富士経済)が2025年7月30日発表した(図1)。
図1 再生可能エネルギー発電システムの国内市場
出所 株式会社富士経済 プレスリリース 2025年7月30日、「再生可能エネルギー関連の国内市場を調査」
2040年度の市場規模は2.9兆円、太陽光と洋上風力がけん引
富士経済の「再生可能エネルギー発電システム・サービス市場/参入企業実態調査 2025」は、再生可能エネルギー関連の国内市場を調査したもの。対象にした市場は、太陽光、風力、水力、バイオマス、地熱といった再生可能エネルギー(再エネ)発電システム、関連機器・サービスに加え、再エネ電力利活用機器・サービス。
同調査によれば、再生可能エネルギー発電システムの国内市場規模は、2025年度が2兆28億円であり、長期的に拡大が続き、2040年度には2024年度比で66.6%増となる2兆9,070億円になる。
2025年度時点で再生可能エネルギー発電システム市場の約5割を占める太陽光発電システムが、kWベースのコスト低下を背景に普及が進み、2040年度には6割近くを占める。太陽光発電システム市場は、住宅向けでは電気料金削減を目的とした自家消費用途での導入が堅調に推移する。非住宅向けでは、卒FIT(Feed-in Tariff:固定価格買取制度)注1に伴うリプレース・リパワリング注2需要が2030年代に高まるほか、ペロブスカイト太陽電池注3の開発など新規需要創出の動きも活発化しており、第7次エネルギー基本計画の達成に向けた導入促進が市場拡大を後押しする。
風力発電システムは、陸上風力の適地減少により、開発の主軸が洋上風力へ移行する。洋上では2030年度前後に数百MW規模の大型プロジェクトが複数運転開始を予定されているなど、大規模化が進む。規制見直しやガイドライン策定も進んでおり、年間1GW程度の促進区域指定が長期的な成長を支えると予測される。2040年度には、洋上風力がけん引役となり、再生可能エネルギー発電システム市場の3割程度を占めるようになる。
水力発電システムは、2030年度までに大型のリプレース案件が完了し、以降は1~5MW未満の小規模案件が中心となるため、市場は縮小傾向をたどる
バイオマス発電システムは、2025、2026年度にFIP(Feed-in Premium)注4制度への移行に伴うFITでの駆け込み需要がある。しかし、長期的には輸入材を利用する大型案件が減少し市場は縮小する。既存の石炭火力発電所をバイオマス専焼・混焼へ転換する動きや、Non-FITでの売電事業への期待もあるが、卒FIT後の安定的な燃料調達が課題となる。
地熱発電システムは、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の支援により、大型案件の具体化が進んでいる。「地熱フロンティアプロジェクト」による未開発エリアの開発促進も期待されるが、開発のボトルネックから導入ペースは緩やかになる。
第7次エネ基本計画の発電量目標は達成可能、ただし電源別には濃淡
第7次エネルギー基本計画では、2040年度の日本全体の発電量のうち再生可能エネルギーが4~5割を占める目標が掲げられている。富士経済の予測では、2040年度の再エネによる発電量は4,888.5億kWhとなり、計画の下限値に近い水準で目標は達成可能とみている。しかし、電源別にみると達成状況には濃淡が現れる見通しだ(図2)。
図2 第7次エネルギー基本計画の目標値と富士経済による予測の比較
出所 株式会社富士経済 プレスリリース 2025年7月30日、「再生可能エネルギー関連の国内市場を調査」
太陽光発電は、人員不足による施工能力の限界や適地減少から、発電量の伸びは計画の下限値を下回ると予測される。
風力発電は、設備稼働率の高い洋上風力の導入拡大により、計画の上限値に近い水準まで発電量を伸ばす可能性がある。
水力発電はリプレースが中心のため発電量の増加は微増にとどまり、地熱発電は開発のボトルネックから目標値を大幅に下回るとみられる。
バイオマス発電は2030年時点では目標の上限値に近い水準となるが、卒FIT後の事業継続性への支援がなければ、2040年度の発電量維持は難しいと指摘している。
注1:FIT(Feed-in Tariff:固定価格買取制度):再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が国の定めた価格で一定期間買い取ることを義務付ける制度。
注2:リプレース・リパワリング:老朽化した設備を更新すること(リプレース)や、高効率な機器に入れ替えることで出力を増強すること(リパワリング)。
注3:ペロブスカイト太陽電池:ペロブスカイトと呼ばれる結晶構造を持つ材料を用いた次世代型の太陽電池。軽量で柔軟性があり、低照度でも発電できる特徴を持つ。
注4:FIP(Feed-in Premium):FIT制度に代わり導入された制度。再エネ発電事業者が卸電力市場などで売電した際に、その売電価格に加えて一定のプレミアム(補助額)を上乗せして交付する。
参考サイト
株式会社富士経済 プレスリリース 2025年7月30日、「再生可能エネルギー関連の国内市場を調査」