太陽光パネルの板ガラスを粉砕せずオフィス家具に再利用
株式会社イトーキ(以下、イトーキ)、株式会社日立製作所(以下、日立)、株式会社トクヤマ(以下、トクヤマ)の3社は、使用済みの太陽光パネルから回収した板ガラスを、粉砕せずにそのままオフィス家具の部材として再利用するアップサイクル技術の実証を実施した。トクヤマの「低温熱分解法」で高品質なガラスを回収し、日立の「非破壊強度推定技術」で安全性を評価、イトーキが会議ブースを試作した。国内初の事例であり、新規製造する場合と比較してCO2排出量を最大50%削減すると見込む。3社が2025年9月1日に発表した。
図1 3社の実証で開発した、太陽光パネルから回収した板ガラスを再利用した会議ブースの試作品
出所 株式会社イトーキ ニュースルーム 2025年9月1日、「イトーキ、日立、トクヤマ、太陽光パネル板ガラスをそのままオフィス家具へ、アップサイクル実証」
新規製造と比べCO2排出量を最大50%削減
板ガラスは、太陽光パネルの重量のうち、約6割を占めている。そのリサイクル方法は粉砕して路盤材などに利用するカスケードリサイクルが主流であり、より付加価値の高い利用法の確立が求められていた。板ガラスを粉砕せずに再利用する場合、飛来物の衝突などで生じる微小な亀裂や、雨水などによってガラス表面のアルカリ成分が溶け出す「アルカリ溶出」といった品質劣化が課題となっていた。
イトーキ、日立、トクヤマの3社は2024年9月より共同研究を開始し、板ガラスを高品質なまま家具部材としてアップサイクルする技術開発に着手した。3社の実証では、まずトクヤマが国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)と共同開発した「低温熱分解法」により、熱分解の条件や処理工程を最適化することで、太陽光パネルを構成する板ガラスやセルなどの高い品質の状態で回収する。さらに板ガラスをそのまま製品化するための課題を抽出し、品質管理や処理工程に反映する。
次に日立が、独自の「非破壊強度推定技術」により、ガラスの強度低下につながる亀裂とアルカリ溶出という2つの劣化要因の影響を複合的に評価する。画像処理によって劣化要因を判別し、回収されたガラスの強度を1枚ずつ推定する。
イトーキが、回収されたガラスを用いてWeb会議用のブースを試作した。回収したガラスはサイズが不均一で板厚も限定されるため、安全性を確保する「合わせガラス」に加工した。されらに、強度を保持するため、ガラス面とスチール面を組み合わせたパネル構造を新たに設計している。さらに、ガラス表面に残る微細な凹凸を、視線を遮る意匠として活用した。
実証により、回収したガラスを合わせガラスに加工することで、オフィス家具の部材として十分使用可能であることを確認したという。また、ライフサイクルアセスメントの観点からCO2排出量を試算した結果、新規にガラスを製造する場合と比較して最大で50%の削減効果があるという。
今後3社は、同技術の実用化に向け、オフィス家具だけでなく建材分野など多様な領域のパートナーと連携し、サプライチェーンの構築や事業モデルを検討する。あわせて、さらなる品質検証と評価技術の標準化を進める。
参考サイト
株式会社イトーキ ニュースルーム 2025年9月1日、「イトーキ、日立、トクヤマ、太陽光パネル板ガラスをそのままオフィス家具へ、アップサイクル実証」