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直流主体のマイクログリッドシステムの実証、前田建設とダイハツ

平常時のCO₂削減や停電時の電力供給を検証
2025/11/10
(月)

マイクログリッドシステムの実証実験を開始

 前田建設工業株式会社(以下、前田建設)とダイハツ工業株式会社(以下、ダイハツ)は、太陽光発電と電気自動車(BEV)、蓄電池を連携させた直流主体のマイクログリッドシステム注1の実証実験を開始した(図1)。平常時の二酸化炭素(CO₂)削減効果や停電時の電力供給を検証し、公共施設への提供を目指す。2025年11月6日に発表した。

図1 前田建設とダイハツによる実証実験のシステム構成イメージ

出所 前田建設工業株式会社 ニュース 2025年11月6日、「移動可能なコンテナに集約した直流主体のマイクログリッドシステムの実証実験開始」

 

平常時と停電時を想定した検証を実施 

 前田建設とダイハツの実証では、前田建設のイノベーション実装施設「ICI-Camp」で、太陽光発電の電気を体育館と食堂に供給し、余剰電力を蓄電池やダイハツが2025年度に導入を予定している商用軽バン電気自動車(以下、BEV商用軽バン)のバッテリに蓄電する。

 平常時は、日中一時的に電力のピークが高まる厨房に接続し、電力消費の平準化によるCO₂の削減効果を検証する。また、災害などによる停電時を想定し、太陽光発電や蓄電池を活用して体育館への電力供給を継続し、避難所としての安全性を確認する。

 実証実験で信頼性が確認できた場合には、蓄電池と太陽光発電の接続による電力供給や、BEV商用軽バンを用いた複数建物間での電力融通についても検証する。

 使用するマイクログリッドシステムは、太陽光発電、スマートパワーハブ(SPH)、電気自動車(BEV)、蓄電池などで構成し、SPHと蓄電池は、トレーラーで牽引できる20フィートコンテナに設置する。

 SPHは、株式会社豊田中央研究所とダイハツが共同開発した電力変換器。太陽光発電や蓄電池、BEVといった直流機器との接続に利用でき、交流主体のマイクログリッドと比べて電力変換回数が少なく、エネルギーロスを約45%削減する。また、ハイブリッドシステムのインバータ技術を応用したパワー素子の採用により、シンプルかつコンパクトな構成となっている。さらに、超高速制御により、瞬時の電圧変動や瞬停時、停電時にも継続して電力を供給できるとしている。

 今後、マイクログリッドシステムについて、公共施設への提供を目指すとともに、瞬停・停電が許されない工場やデータセンター、医療、介護施設などでのニーズも確認する。

 前田建設は、再生可能エネルギー(以下、再エネ)の導入を積極的に進めている。また、ICI-Campの体育館が茨城県取手市との防災協定により、市民の避難所になっているため、停電時の電力供給が必要である。加えて、被災地での復旧活動を行う中で、現地の再エネとの接続が容易で、かつ移動可能な非常用電源の必要性を感じていた。

 ダイハツは、電動化などによる車両走行時のCO₂排出量の削減に加え、工場や物流、販売店舗といった生産・非生産分野での脱炭素化も喫緊の課題となっている。再エネの有効活用に向け、エネルギーを地産地消できるマイクログリッドシステムの研究開発を進めている。


注1:マイクログリッド:電力消費地の近くに配置された太陽光発電などの発電設備と、蓄電池などを組み合わせて、地域単位で電力を供給・管理する小規模な電力網。

参考サイト

前田建設工業株式会社 ニュース 2025年11月6日、「移動可能なコンテナに集約した直流主体のマイクログリッドシステムの実証実験開始」
 

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