1.仙台マイクログリッドが東北復興に果たす役割
江崎:このたびは、東北福祉大学キャンパスに構築された、「仙台マイクログリッド」(品質別電力供給システム)の視察の機会を設けていただきありがとうございました。大変大きな成果であることを実感いたしましたが、このシステムは、東北復興に、そして今後の日本の新しい電力ネットワークに、どのような役割をもつとお考えでしょうか。
今泉:仙台マイクログリッドは、後掲の特集1-2の記事(9~19ページ)で詳細に紹介されているように、東北電力の系統電力に、燃料電池、ガスコージェネレーション、太陽光発電などローカルなエネルギー源をミックスして、品質別、用途別に電気を供給し、負荷に応じてコントロールを行うというシステムを実証する目的で構築されました。このシステムは、今後、日本のみならず、世界中でエネルギー全体の効率的な利用が必要とされる中で、先駆的な事例であったと思います。 また、実証実験の終了後も、システムは東北福祉大学に資産譲渡され、その運営が継続されています。2011年3月11日の東日本大震災の際には、電力会社による系統電力が停電していた状況にもかかわらず、仙台マイクログリッドが機能し、運転(発電)し続けたということもあり、今日、関係者によって今一度その重要性が再認識され、見直されています(図1)。
江崎:仙台マイクログリッドの根本的な考え方はどこにあったのでしょうか。
今泉:もともとは2000年頃から、マイクログリッドの技術的要素やビジネスモデルについて、大学をはじめ各研究機関で学術的に議論されていました。そのアイデアが基礎としてあり、そこにNEDOの実証実験の公募があったため、NTTファシリティーズが実証を行いました。
江崎:現在、NTTファシリティーズが考えているビジネスエリアはどこなのでしょうか。
今泉:エネルギー全体の自由化時代を迎えた今日、当社としては、電力の需要家であるが故に果たせるポジションを形作りたいと考えています。もともとエネルギーの需要家サイドのオペレーションについては事業の主軸としてきましたが、さらに新しい時代に対応したオペレーションを理解したうえで、インフラ全体の設計に関しても取り組みを始めているところです。
江崎:ビジネスドメインを広げる事業戦略を開始しているということでしょうか。
今泉:はい。ドメインを広げていきたいと思っていますが、当社は発電所をもっているわけではありませんので、多様なエネルギー源を上手に組み合わせて提供することと、効率的にエネルギーを供給するために、ベストミックス注2な環境の構築を行っていきたいと考えています。
江崎:今回の仙台マイクログリッドでの実証実験では、ある程度インフラが整っているときに、2メガワットくらいの規模のコンパクトシティを、どのように設計して運用するかということが実践的に把握できたのだと思いますが、この経験は、東北復興にとってどのように役立つとお考えでしょうか。
今泉:復興については、それぞれ被災された方々の思いや、各場所の状況もありますので一概には申し上げられませんが、今回の仙台マイクログリッドの経験は、復興に役立てやすい規模、対象であると思います。
江崎:南海トラフ(四国沖の深い溝)など、大都市の直下型地震の問題もあり、今後、そのような地域の設計というのは非常に重要になると思います。このような仙台マイクログリッドの経験は、日本全国に、また、グローバルに展開したいとお考えでしょうか。
今泉:そのように考えております。この経験をどのように発展させられるか、さまざまな方法論を考えているところです。
ベストミックス:エネルギーの供給に関して、単一のエネルギー源に依存するのではなく、火力・水力・原子力・自然エネルギーによる発電をバランスよく組み合わせること。
「仙台マイクログリッド(品質別電力供給システム)の3.11 災害時の挙動について」、2014 年4 月7 日、NTTファシリティーズ