≪1≫WiMAXフォーラム日本オフィスの役員とメンバー構成
日本オフィスの代表には東京大学名誉教授の齊藤忠夫氏が就任。技術担当の副代表には慶應義塾大学環境情報学部教授の小檜山賢二氏、企画担当の副代表には、インテル 研究開発本部主幹研究員の庄納崇氏が就任。また、日本オフィスのメンバー企業は20社、WiMAXフォーラム本部のメンバーは9月3日時点で491社にのぼり、2007年末に500社を目指して国際的な活動を展開している。
最初に挨拶した、インテル 代表取締役共同社長の吉田和正氏(写真2)は、「インテルとしてIEEE 802.16の標準化活動やITU-Rへの国際標準化の働きかけ、さらに世界各地域におけるWiMAX用の周波数獲得のために積極的に活動してきた。現在、光ファイバなど固定ブロードバンド・サービスの分野では国際的にリードしている日本は、ワイヤレス・ブロードバンドにおいても先進的な役割を担っていくことが求められている。インテルは今後ともWiMAXフォーラムや日本オフィスの活動をバックアップしていきたい」と語った。
≪2≫世界のWiMAXユーザーは5000万へ
続いて、WiMAXフォーラムを代表してプレゼンテーションを行ったWiMAXフォーラムボードメンバー兼マーケティング副代表のモハンマド・シャクリ氏(写真3 アルバリオン社 戦略担当副社長)は、「動画共有サービスであるYouTubeなどの登場によって、インターネットからの動画のダウンロードが急増しており、オープンなWiMAXによるワイヤレス・ブロードバンドへの期待は大きくなってきている。また、WiMAXは3G(第3世代携帯電話)を補っていくワイヤレス・ブロードバンドとしても期待されており、これから4~5年の間にWiMAXユーザーは、全世界で5000万~6000万に達する」と予測した。
さらに、国際的なマーケティングからも、今後、日本や韓国、米国のコンシューマ・エレクトロニクス・メーカーから、WiMAX搭載機器が急速に増加していくことになること、続いて図1を示しながら、WiMAXの導入が、先進国だけでなく開発途上国においても活用され始めている状況を説明した。
≪3≫モバイルWiMAXが6番目の国際標準インタフェースへ
また、「図2のスライドに示すように、既存のITU-RのIMT-2000(第3世代モバイル規格)という国際標準にモバイルWiMAXが仲間入りさせる活動も順調に進んでおり、2007年10月15日~19日に開催されるITU-RのRA(Radiocommunication Assembly、無線通信総会)での審議を山場とし、IEEE 802.16e(モバイルWiMAX)が第6番目の陸上無線インタフェース(※1)として承認されることになろう」と標準化への期待を述べた。
この背景には、すでに2007年1月のITU-R SG8 WP8F(※2)の会合において、WiMAXフォーラムのサポートのもと、IEEE(米国電気電子学会)が、IEEE 802.16eによって補足修正された802.16-2004に準拠するモバイルWiMAX〔提案名称は「IP-OFDMA」(※3)〕をIMT-2000の6番目の陸上無線インタフェースとして提案し、現在WP8Fでの審議は終了し、ITU-Rでの議論が大詰めを迎えている状況にある。
※1 用語解説
既存のIMT-2000陸上無線インタフェースとしては、
(1)CDMA Direct Spread(W-CDMA、日本・欧州による提案)
(2)CDMA Multi-Carrier(CDMA2000、米国による提案)
(3)CDMA TDD(TD-SCDMA:Time Division-Synchronous CDMA、中国による提案)
(4)TDMA Single-Carrier(EDGE、UWC-136。米国による提案。EDGE:Enhanced Data rate for GSM Evolution、GSMの進化版で最大384kbps。UWC-136:Universal Wireless Communications)
(5)FDMA/TDMA(DECT:Digital Enhanced Codeless Telecommunications、日本のPHSに類似した欧州の方式。欧州による提案)
の5つが標準化されている〔CDMA:Code Division Multiple Access、符号分割多元接続。TDMA:Time Division Multiple Access、時分割多元接続。FDMA:Frequency Division Multiple Access、周波数分割多元接続〕。
※2 用語解説
ITU-R SG8 WP8F:ITU-R Study Group8 Working Party 8F、ITU-R(ITUの無線通信部門)の第8研究委員会の8Fという名称の作業部会。主にIMT-2000(3G)およびその後継システムであるIMT-Advanced(4G:第4世代携帯電話)の審議を担当している。
≪4≫次世代WiMAX「IEEE 802.16m」は130Mbps以上を
同氏は、さらに、モバイルWiMAXが使用する周波数問題に触れ、「当面のメイン・ターゲットは2.5GHz帯と3.5GHz帯としているが、将来的には700MHz帯も加えていく予定である」と述べた。続いて、図3を示しながら、現在IEEE 802.16 ワーキング・グループで標準化を進めている次世代のモバイルWiMAX「IEEE 802.16m」(130Mbps以上)を、IMT-Advanced(4G:第4世代携帯電話)標準としてITU(国際電気通信連合)に提案していると語った。
会場には、WiMAXフォーラムのボード・メンバーであるKDDI 執行役員である冲中秀夫氏もかけつけ挨拶を行った。
≪5≫モバイルWiMAXの普及への期待
WiMAXフォーラム日本オフィス代表の斎藤忠夫氏(写真4。東京大学名誉教授)は、「日本では、現在ブロードバンド・インターネットの利用可能世帯数が95%(4800万世帯)となっており、光ファイバ(FTTH)の利用者は900万に達している。さらにブロードバンド携帯電話アクセスも広く普及しているが、現在は、より開かれたオープンなBWA環境が必要とされている。
WiMAXフォーラムでは、世界のどこにいてもサービスが受けられる世界共通のプロファイル(仕様)づくりが進められている。さらに、自分の標準化活動の経験に照らしても、しっかりとした相互接続試験が行われているなど、WiMAXは信頼性の高いシステムとなっており、今後、モバイルWiMAXの普及に大きく期待したい」と語った。
≪6≫2つのワーキング・グループが活動を展開
最後に登場した、WiMAXフォーラム日本オフィス副代表のインテル 研究開発本部主幹研究員の庄納崇氏(写真5)は、日本オフィスの組織について説明した(図4、図5、図6)。現在日本オフィスには、2つのワーキング・グループ(WG)、すなわち、
(1)テクニカル&レギュラトリWG
(2)アプリケーション&マーケティングWG
を設け、それぞれの役割について説明。具体的には、「6番目のIMT-2000陸上無線インタフェースの実現に向けた活動や、総務省から割り当てられた2.5GHz帯の周波数を有効に活用できるようにしていきたい」とフォーラム活動の抱負について述べた。さらに、今後は積極的に、セミナー・イベント企画をはじめ、書籍出版から雑誌のインタビューに至るまで、幅広い活動を展開していくと語った。