真のモバイル・ブロードバンド時代を実現するUQ WiMAXのサービス戦略を聞く(第4回:最終回)

インプレスSmartGridニューズレター編集部

2009年4月30日 0:00

UQコミュニケーションズは、去る2009年2月26日から、どこでもブロードバンド・アクセスを可能とする「UQ WiMAX」サービスを東京23区・横浜市・川崎市の一部で開始。オープンなモバイル・ブロードバンド時代の幕開けを告げた。この歴史的な「UQ WiMAX」サービスは、モバイルWiMAX(IEEE 802.16-2005)に準拠した世界基準のブロードバンドであり、大きな注目を集めている。ここでは、UQコミュニケーションズ(株)取締役 執行役員副社長の片岡 浩一(かたおかこういち)氏に、同社のモバイルWiMAXの取り組みの経緯から、そのビジネス・モデル、「UQ WiMAX」サービスへのユーザーの反響、さらに今後の展開などをお聞きした。
今回(第4回:最終回)は、WiMAXのMVNO、UQ WiMAXへの投資金額や基地局の設置計画、具体的なアプリケーションのイメージ、国際ローミングなどについてお話いただいた。
(聞き手:インプレスR&D インターネットメディア総合研究所)

真のモバイル・ブロードバンド時代を実現するUQ WiMAXのサービス戦略を聞く

≪1≫WiMAXのMVNOは、ニフティ、NECビッグローブをはじめすでに約20社へ

片岡浩一氏(UQコミュニケーションズ執行役員副社長)
片岡浩一氏
(UQコミュニケーションズ
執行役員副社長)

■ ところで、WiMAXを普及させるうえで重要な、UQのWiMAXネットワーク設備を貸し出すMVNO(Mobile Virtual Network Operator、仮想移動通信事業者)は、具体的に何社くらいのお話が進んでいますか。

片岡 UQ WiMAXのサービス開始と同時にスタートしたMVNOは、ニフティ株式会社、NECビッグローブ株式会社など約20社です(2009年4月現在)。

■ 2009年度は、どれぐらいのユーザー数を想定していますか。

片岡 この前の記者会見で、当社の田中社長が申し上げましたように、大ざっぱに数十万を予定しています。


≪2≫WiMAX事業への投資金額と基地局の設置計画

■ 今後、WiMAXの事業を展開するとなると基地局の設置など、かなりの投資が必要と思いますが、今後の投資計画はいかがでしょうか

片岡 当社のWiMAXへの設備投資としては、2009年~2013年の5年間で1,500億円程度の投資計画となっています。UQ WiMAX用の屋外基地局は、この5年間で約1万9,000局の申請を総務省に出しています。この基地局数で、人口カバー率90%以上を達成する予定です。

具体的には表1に示すように、2009年7月の有料の商用サービスの開始までに約500基地局を設置し、その後順時拡大していき、2013年3月(2012年度末)までに約19,000局を設置して、全国エリアをカバー(90%超)していく計画です。

表1 UQ WiMAX基地局の設置時期とカバー・エリア
基地局設置時期 基地局数 カバー・エリア
2008年2月(お試し期間) 約500局 首都圏(東京23区/横浜市/川崎市)の一部をカバー
2009年7月(有料サービス開始) 約2,000局 首都圏、京阪神/名古屋エリアをカバー
2010年3月(2009年度末) 約4,000局 全国政令指定都市等へ拡大
2011年3月(2010年度末) 約9,000局 全国主要都市へ拡大
2013年3月(2012年度末) 約19,000局 全国エリアをカバー(90%超)

≪3≫UQ WiMAXサービスで想定されるアプリケーション

■ UQ WiMAXサービスで、今後想定されるアプリケーションはどのようなものがあるのでしょうか。

片岡 図1に、いろいろなアプリケーションを実現するWiMAXデバイスの普及のイメージを示します。この図は、左側が「事業領域の拡大」、右側が「サービス・エリアの拡大」というパラメータになっています。

図1の左側下に示すように、現在はデータ通信カードをモニターの皆さんに配布しているところです。次に、2009年7月以降にWiMAXチップ搭載のノート・パソコンが、さらにその後MID(Mobile Internet Device)なども登場してきます。その後は、事業領域の拡大と、エリアの拡大に伴って、空調監視やエレベータ監視、ポータブル・オーディオ、広告ディスプレイ(デジタル・サイネージ)、ポータブル・ゲーム、デジカメなども包含する情報家電分野へも普及させていきたいと考えています。

また、これら以外に、特に、テレメトリング(遠隔計測)系では、大容量は要らないが、常時接続でつないでおきたいというニーズもあります。これらを実現するには、現在の3Gでは料金的に高くなってしまう場合のニーズもあるようで、期待されています。

さらに、WiMAXの高速性を利用して、デジカメなどの場合は、今、自分で撮ったデジカメの画像が「自分のメモリー・カードに格納されて入っているのか」、それとも同時にネットワーク上の「サーバの格納されたものを呼び出しているのか」を、多分意識しないで使えるようになってくると思います。


図1 WiMAXデバイスの普及のイメージ(クリックで拡大)

■ 図1の図のエリアの拡大という場合、エリアが広くなったというのは基地局が何局のころからなのですか。

片岡 WiMAXビジネスが本格的に立ち上がるようになる時点、すなわちエリアのカバー率が70%以上のところかなと思っていまして、それは2010年頃と思っています。そこからいろいろなプレーヤーが次々に出てくると思います。

≪4≫海外のWiMAXサービスと国際ローミングの実現

■ WiMAXのサービスに関しては、普及の途上にあるためいろいろな評価がありますが、海外の事例などを交えて、御社はどのように見ていますか。

片岡浩一氏(UQコミュニケーションズ執行役員副社長)
片岡浩一氏
(UQコミュニケーションズ
執行役員副社長)

片岡 そうですね。前回申し上げたように、すでに韓国では韓国版WiMAXの「WiBro」というサービスが開始(2006年)されていますが、米国でも取り組みが活発化しています。

ご承知のように、例えば、米国の大手通信事業者「クリアワイヤ」(Clearwire)と「スプリント・ネクステル」(Sprint Nextel)は2008年12月1日、合弁会社「クリアワイヤ」を設立、共同で全米規模のWiMAXネットワークを構築すると発表しました。スプリント・ネクステルは、すでに2008年9月にメリーランド州ボルチモアで、日本と同じ2.5GHz帯の周波数でWiMAX商用サービス「XOHM」(ゾーム)の提供を開始しています。

このように、海外でも新しいWiMAXサービスの展開が広がってきており、今年はもっと増えていくと思います。

■ 今お話のあった、米国のWiMAXサービスの周波数帯(2.5GHz帯)が、日本と同じということはWiMAXによる国際ローミングがしやすいということでしょうか?

片岡 そのとおりですね。当社では、すでにクリアワイヤがサービス開始する時点から、どのようなスケジュールでローミングが可能になるかについて検討してきています。これまでは、お互いに自分のサービスを開始・展開するほうが重要でしたので、今後はそのようなローミングのような話が進んでいくと思います。

また、前にお話しましたように、WiMAXサービスはWiMAXフォーラムの基準(世界基準)に基づいて提供されるものですから、例えば、周波数が合っている場合は、お互いに端末も親和性があり、認証などの問題を解決すればネットワーク上で容易につながります。そこで、WiMAX端末の製品を作る場合に、お互いによい商品があれば、連携することによって、日本のUQでも使える、米国のクリアワイヤでも使えるというように、世界のどこも使えるようになれば、端末のコストもかなり下げることができるようになります。

■ インターナショナルなWiMAX端末の開発ですね。

片岡 また、日本のWiMAXサービスには、大きな特徴があります。国際的にみて、現状では、事業的に全国エリア展開(ネーション・ワイド)で事業を展開していくことを明確にして、サービスを提供しているのはまだUQコミュニケーションズだけなのです。たしかに、クリアワイヤはサービス・エリアをボルチモアやポートランドに広げ、KTはまだソウル中心にサービスを行い、徐々に広げていますが、WiMAXサービスを全国に広げる方針を明確にして、その展開のスピードも当社が一番早いということで、国際的に各事業者から非常に注目されています。

≪5≫今後の展開:何よりもサービス・エリア拡大が第一!

■ 今後の展開の中で力が入っているところをお話しいただけますか。

片岡 まず、何よりもUQ WiMAXサービス・エリアの拡大です。このような通信ビジネスは、1にも2にも3にもエリアの拡大が最も重要です。土俵をつくらないと、相撲がとれません。

■ ターゲットとするユーザーあるいは注力されるサービスは?

片岡 やはりビジネス向けの法人ユーザーがターゲットになります。現在、日本では、足回り(アクセス回線)として、いろいろなワイヤレス・サービスが提供されています。通常、法人で利用される場合は、当然各ユーザー企業はそれぞれのイントラ(イントラネット)につなげて利用することになります。このため、高速回線の提供だけでなく、セキュリティの保証をはじめビジネス用のアプリケーションをどう動かすかも含めて、トータルの提案が求められます。ですから、私たちのWiMAXサービスは、各ユーザー企業とビジネスパートナーとなって一緒にやっていくことが重要になります。

■ もう少し具体的にお話しいただけますか?

片岡 例えば一番わかりやすいのは、KDDIは当社への出資会社ですが、KDDIは企業向けのサービスについてイントラ系サービスからデータセンターなどのサービスも含めた豊富なメニューをもっています。このため、法人向けのトータルのソリューションを提供する場合は、例えばKDDIのサービスと連携していろいろなサービスを実現するとことも可能となります。今後、高速なWiMAXネットワークのよさをうまく利用して、いろいろな新しいサービスを提供していきたいと思っています。

■ ぜひとも、WiMAXビジネスの成功を祈っています。ありがとうございました。

(終わり)


プロフィール

片岡浩一氏(UQコミュニケーションズ 執行役員副社長)

片岡 浩一(かたおか こういち)

現職:UQコミュニケーションズ株式会社 取締役 執行役員副社長

【略 歴】
1985年 DDI株式会社入社
2002年 KDDIブロードバンド企画部長
2004年 KDDIブロードバンドコンシューマ事業本部プロダクト統轄部長
2005年 KDDIブロードバンドコンシューマ事業企画部長
2006年 KDDIネットワークソリューション事業本部
    ネットワークソリューション事業企画部長
2007年 KDDIソリューション事業統轄本部 ソリューション商品企画本部長
    ワイヤレスブロードバンド企画株式会社
    (現、UQコミュニケーションズ株式会社) 取締役
2008年 現職に至る


 

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