[展示会]

LTEやWiMAXの登場で転換期を迎えた米国ラスベガスの「CTIA Wireless 2008」レポート

2008/05/07
(水)
SmartGridニューズレター編集部

去る2008年4月1日~3日の3日間、米国ラスベガス・コンベンション・センターで、米国最大級の通信関連の展示会「CTIA WIRELESS 2008」が開催され、全世界125カ国から1,100社を超える出展企業と業界団体が参加し、4万人を超える来場者(主催者側発表)でにぎわった。今年は、北米での700MHzの周波数オークションや、WiMAXや4G、LTEなどの次世代のモバイル・ブロードバンド技術など相次ぐトピックスの登場で、世界のワイヤレス市場が大きな転換期を迎えていることを強く印象付けた。CTIA(Cellular Telecommunications and Internet Association)は、1984年に設立された携帯電話などの移動通信や無線インターネットに関する米国の通信業界団体で、毎年展示会を開催している。

LTEやWiMAXの登場で転換期を迎えた米国ラスベガスの「CTIA Wireless 2008」レポート
OKI 千村 保文/インプレスR&D 標準技術編集部
 
写真1 ラスベガスで開催されたCTIA Wireless 2008会場の様子(クリックで拡大)

≪1≫大きな転換期を迎えたワイヤレス市場

[1]ベライゾン・ワイヤレス社長:ワイヤレス市場に大きな新しい流れ

基調講演に登場した、ベライゾン・ワイヤレス(Verizon Wireless)社長兼CEO ローウェル・マカダム(Lowell McAdam)氏は、ワイヤレス市場は、大きな節目を迎えていると前置きし、「現在、携帯網は3Gから4Gへ、アプリケーションは音声からデータへ、メディアはテキストからビデオへ移行しはじめている。まさにリッチコンテンツの世界が到来している」とアピールした。米国の携帯電話というと、大きく武骨なイメージがあるが、「これからのイノベーションのキーワードは"Cool & Smaller"(高機能で小型)が重要であり、成長のためには、米国は州ごとの個別規制を見直すべきだ」と現在のFCC(Federal Communications Commission、連邦通信委員会)や州政府への要求も忘れなかった。

[2]CTIA社長:時代は音声からデータへ

CTIA社長兼CEOスティーブ・ラライト(Steve Laright)氏は、具体的なデータを示し、時代の変化を強調した。ラライト氏によると「2007年のデータ市場の売上は230億ドル(約2兆3000億円)。これは北米全体市場の17%であり、前年度比53%増。テキスト・メッセージは1カ月に480億メッセージがやりとりされている」と述べ、「時代は、完全に音声からデータへの転換点を迎えている」と語った。

[3]FCC会長:700MHzオークションはイノベーションを加速

北米で新たに設定された700MHz帯のオークションを主導したFCC会長 ケビン・マーチン(Kevin Marthin)氏は、「700MHz帯は時代を変えるだろう」と予言。「700MHzを落札したベライゾン・ワイヤレスは次世代のイノベーションを加速するだろう」と期待を述べたあと、「成功の鍵は"Open Devices"だ」とオープンなサービスの必要性を強調した。また、Public Safety(公共の安全性)の要件が州ごとに異なるといった課題が未解決なことを明示し、「700MHzの利用により、Public Safetyの課題が解決することを期待している」と語った。

[4]ヴァージン・グループ会長:サービス・ビジネスの原点を披露

ヴァージン・グループ(Virgin Group)会長リチャード・ブランソン(Richrad Branson)氏の登場は、技術屋の集まりのCTIAの会場に嵐を連れてきた感があった。彼は「サービス・ビジネスの原点は、顧客にサービスを楽しんでもらうことだ」とわかりやすいメッセージを披露。これまでも「そのためのイノベーションに前向きにチャレンジしてきた。ヴァージン・モバイル(Virgin Mobile)もその一環。そのために、ヴァージン・モバイル・フェスティバル(Virgin Mobile FESTIVAL)を各地で開いている」と述べた。このような「顧客に楽しんでもらう」という視点は、今後の日本の携帯電話事業の発展にも重要な視点だ。また、ヴァージン・グループの次のチャレンジは、"宇宙旅行"とのこと。ヴァージン・ギャラクティック(Virgin Galactic)が個人向けの宇宙旅行事業を立ち上げているとのことだった。

[5]マイクロソフト:Windows Mobile 6.1のリリースを発表

マイクロソフトのエンターテインメント&デバイス事業プレジデントのロバート・バック(Robert Bach)氏は、「マイクロソフトは"Mobile Space"にマッチしたデバイスを開発する。"Windows Mobile 6.1"を近々リリースする」と発表した。壇上でWindows Mobile 6.1を搭載した携帯端末でのデモを実施。Flash Lite(※)を標準サポートし、ユーチューブ(YouTube)を軽快に動かして見せた。その後、ソニー・エリクソン(Sony Ericsson)がWindows Mobile 6.1を搭載したスマートフォン"EXPERIA X1"を紹介。折りたたみ式のQWERTYキーボード、大型ディスプレイと、まさに、ポケットに入るモバイルPCである。展示会場においても、Windows Mobile 6.1端末がいくつも展示されていた。実際に操作をしてみたが、反応スピードも大分改善されており、「これは使える」と実感させた。今後、日本でもQWERTYキーボード搭載の携帯端末が普及していくだろう。

※Flash Lite:アドビが携帯機器用に開発したWebサイトのリッチコンテンツ再生ソフト

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