≪1≫大きな転換期を迎えたワイヤレス市場
[1]ベライゾン・ワイヤレス社長:ワイヤレス市場に大きな新しい流れ
基調講演に登場した、ベライゾン・ワイヤレス(Verizon Wireless)社長兼CEO ローウェル・マカダム(Lowell McAdam)氏は、ワイヤレス市場は、大きな節目を迎えていると前置きし、「現在、携帯網は3Gから4Gへ、アプリケーションは音声からデータへ、メディアはテキストからビデオへ移行しはじめている。まさにリッチコンテンツの世界が到来している」とアピールした。米国の携帯電話というと、大きく武骨なイメージがあるが、「これからのイノベーションのキーワードは"Cool & Smaller"(高機能で小型)が重要であり、成長のためには、米国は州ごとの個別規制を見直すべきだ」と現在のFCC(Federal Communications Commission、連邦通信委員会)や州政府への要求も忘れなかった。
[2]CTIA社長:時代は音声からデータへ
CTIA社長兼CEOスティーブ・ラライト(Steve Laright)氏は、具体的なデータを示し、時代の変化を強調した。ラライト氏によると「2007年のデータ市場の売上は230億ドル(約2兆3000億円)。これは北米全体市場の17%であり、前年度比53%増。テキスト・メッセージは1カ月に480億メッセージがやりとりされている」と述べ、「時代は、完全に音声からデータへの転換点を迎えている」と語った。
[3]FCC会長:700MHzオークションはイノベーションを加速
北米で新たに設定された700MHz帯のオークションを主導したFCC会長 ケビン・マーチン(Kevin Marthin)氏は、「700MHz帯は時代を変えるだろう」と予言。「700MHzを落札したベライゾン・ワイヤレスは次世代のイノベーションを加速するだろう」と期待を述べたあと、「成功の鍵は"Open Devices"だ」とオープンなサービスの必要性を強調した。また、Public Safety(公共の安全性)の要件が州ごとに異なるといった課題が未解決なことを明示し、「700MHzの利用により、Public Safetyの課題が解決することを期待している」と語った。
[4]ヴァージン・グループ会長:サービス・ビジネスの原点を披露
ヴァージン・グループ(Virgin Group)会長リチャード・ブランソン(Richrad Branson)氏の登場は、技術屋の集まりのCTIAの会場に嵐を連れてきた感があった。彼は「サービス・ビジネスの原点は、顧客にサービスを楽しんでもらうことだ」とわかりやすいメッセージを披露。これまでも「そのためのイノベーションに前向きにチャレンジしてきた。ヴァージン・モバイル(Virgin Mobile)もその一環。そのために、ヴァージン・モバイル・フェスティバル(Virgin Mobile FESTIVAL)を各地で開いている」と述べた。このような「顧客に楽しんでもらう」という視点は、今後の日本の携帯電話事業の発展にも重要な視点だ。また、ヴァージン・グループの次のチャレンジは、"宇宙旅行"とのこと。ヴァージン・ギャラクティック(Virgin Galactic)が個人向けの宇宙旅行事業を立ち上げているとのことだった。
[5]マイクロソフト:Windows Mobile 6.1のリリースを発表
マイクロソフトのエンターテインメント&デバイス事業プレジデントのロバート・バック(Robert Bach)氏は、「マイクロソフトは"Mobile Space"にマッチしたデバイスを開発する。"Windows Mobile 6.1"を近々リリースする」と発表した。壇上でWindows Mobile 6.1を搭載した携帯端末でのデモを実施。Flash Lite(※)を標準サポートし、ユーチューブ(YouTube)を軽快に動かして見せた。その後、ソニー・エリクソン(Sony Ericsson)がWindows Mobile 6.1を搭載したスマートフォン"EXPERIA X1"を紹介。折りたたみ式のQWERTYキーボード、大型ディスプレイと、まさに、ポケットに入るモバイルPCである。展示会場においても、Windows Mobile 6.1端末がいくつも展示されていた。実際に操作をしてみたが、反応スピードも大分改善されており、「これは使える」と実感させた。今後、日本でもQWERTYキーボード搭載の携帯端末が普及していくだろう。
※Flash Lite:アドビが携帯機器用に開発したWebサイトのリッチコンテンツ再生ソフト