≪2≫NGN上で企業システムを開放し新たなビジネスにつなげる
■WLCPのユーザー企業としては、通信事業者がメインだと思いますが、他の業界ではどういった企業がターゲットになりますか。
高山義泉氏
(日本BEAシステムズ
WLCPビジネスディベロップメント
マネージャ)
高山 現在のところ9割が通信事業者です。そして、残りの1割は、インターネット系のベンダではなくて、情報家電などのデバイス系ベンダや、通信事業者以外の、NGNと接続詞、NGNを利用してビジネスを展開していきたい企業です。
■NGNに関心が高い企業としては、今、お話があったようにIT産業系や家電系、コンテンツ系などがいますよね。そうした場合、コンテンツの配信では、NTTのNGNの場合は地デジのIP再送信やVoD(※)のような放送に似たサービスをしています。もう少し踏み込んで、例えば放送業界などをどういう位置づけでみておられますか。
※VoD:Video on Demand、見たいときに見ることのできる映像配信サービス
高山 今まで放送業界の方とは、これに関してはお話ししたことがありませんが、NGNの中で、SIPの役割というのはつなぐだけであって、その後のストリーミングの機能は、特にSIPが担っているわけではありません。ですから、放送のようなサービスを目的とした利用の仕方としては、キャリアの中にVoDのシステムがあって、コンテンツを配信したい会社がそこにコンテンツを乗っけておけばキャリアが配信してくれるというサービスや、コンテンツホルダがユーザーに直接配信するサービスなど、いろいろな方法が考えられます。ただ、必ずしもWLCPを使わないとできないというものでもありません。
■それから、今年の夏以降になると思うのですけれども、フェムトセル(超小型の無線基地局)については、どう見ておられますか。
高山 フェムトセルには当社の製品も組み込まれていくと思います。ただ、当社のビジネス・モデルとしては、直接当社が販売するのではなく、パートナー企業が「SIP Server」や「Network Gatekeeper」などの当社の製品を使ってソリューションとして組んだものを提供することになります。ですから、直接BEAという名前は出づらいと思いますが、その中では当社の製品が動いているというケースはよくあります。
■これから市場の大きさや伸びぐあいは、どのように見ておられますか。
高山 BEAの観点から言うと、NGNの商用サービスは3月末に始まりましたが、まだネットワークが引かれただけで、ビジネスはまさにこれからです。NGNでどういうサービスを提供していくのかということは、これからようやくいろいろな企業が考え始めると思うので、そうしたところに当社の「SIP Server」などを利用してもらいたいと思っています。
そのため、社内でNGN参入企業向けにサービスをする組織をちゃんと作ってサポートしようとしています。
■なるほど。わかりました。最後の質問ですが、キャリアがNGNでサービスを展開しようとしてくると、企業の側でも自分たちのシステムもこのNGN環境に対応したいとか、あるいは自分たちのビジネスをNGNの上に乗せて、NGNの中で商売していこうとか、いろいろな発想が出てくると思いますが、御社としてはそうした動きについてはどう対応されますか。
高山 もちろん、NGNに対してサービスを提供していくための製品が「Network Gatekeeper」です。家電やオフィス機器などの製品にSIPサーバを入れれば、SIP対応にすることもできます。
よく上側、下側という言い方をしますが、一般企業が、NGNでキャリアの提供するテレコムのサービスを利用するような、図1中の上部のサービスやソフトウェアの動きと、家電などの製品をNGNに対応させるという、図1中の下部のデバイス側(ケータイ、プリンタ、ディスプレイ、FAX等)の話があります。
そういう意味では、まさにおっしゃられたところが当社のビジネス・チャンスだと思っています。非常に大きな可能性を感じております。
■ところで、NGNを利用したサービスの実例は、日本ではいつごろ出てきそうですか。
高山 下側のハードウェアの場合、ハードウェアの組み込みなどに時間がかかってしまうので、上側のソフトウェアよりも時間がかかり、市場に登場するのは1年ぐらいはかかると思います。
■それらが実現してくると、NGNによる新しいビジネス・モデルが次々と登場してきそうですね。
高山 そうですよね。そのような広がりを期待しています。
■ありがとうございました。
プロフィール
高山義泉(たかやま よしもと)
現職:日本BEAシステムズ株式会社 WLCPビジネスディベロップメント マネージャ
2006年 日本BEAシステムズ入社。
国内及びAPAC(アジア太平洋地域)テレコムビジネス開拓に従事、日本国内、APACのテレコムサービス、マーケット動向に精通。
2002年から、Javaを用いたテレコムアプリケーションのオープン化にも積極的に取組む。様々な"コミュニケーション"サービスの出現に期待している今日である。