第3回:IMS上でサービスを提供する
「WLCP(WebLogic Communications Platform)」の具体的機能と位置づけ
≪1≫IMS上でサービスを提供するWLCPの具体的機能
■これまでのお話で全体的な戦略はわかりました。そこで、次に「BEA WebLogic Communications Platform」(以下WLCP)について、具体的に説明していただけますか。
高山義泉氏
(日本BEAシステムズ
WLCPビジネスディベロップメント
マネージャ)
高山 図1は、WLCPのイメージです。
これまでも述べてきたように、NGNでネットワークの標準化をして、IMSで通信のやり取りの手順が標準化されているという形になります。
このIMSはさらに、図1に示すように、
・IMSコア・ネットワーク・レイヤ
・IMSアプリケーション・サーバ・レイヤ
の2層に分けられますが、そのうちのアプリケーション・サーバ・レイヤの位置で、当社の2つの製品、「BEA WebLogic SIP Server」(以下「SIP Server」)と「BEA WebLogic Network Gatekeeper」(以下「Network Gatekeeper」)が機能します。
※HSS:Home Subscriber Server、ユーザーの主要な情報が格納されたデータベース・サーバ
※CSCF:Call Session Control Function、呼セッション制御機能。IMSにおいて呼セッション制御機能として中心的なノード(通信装置)として位置づけられるSIPサーバ。「P-CSCF」「I-CSCF」「S-CSCF」の3つで構成される
※P-CSCF:Proxy CSCF、プロキシCSCF。IMSのSIPサーバの中で、端末と直接接続されるSIPサーバ。IMS端末からSIPメッセージを受信したり、IMS端末へSIPメッセージを送信したりする
※I-CSCF:Interrogating CSCF、インテロゲーティングCSCF(問い合わせCSCF)。IMS登録時にP-CSCFから受信した登録用メッセージを、S-CSCFへ転送するサーバ。またIMS着信時には、発信側から受信したSIPメッセージをS-CSCFへ転送する
※S-CSCF:Serving CSCF、サービングCSCF。サービス実行のためのセッションを制御するCSCF。サービス実行時に、セッションや加入者の情報を保持するとともに、サービスを制御するためにAS(アプリケーション・サーバ)と接続する
■電話サービスであるVoIPや、映像サービスであるIPTVなどのサービスは、IMSのどのレイヤが対応するのですか。
高山 かかってきた電話を相手に「接続する」(セッションを確立する)という電話サービスの場合、SIPによる相手と「接続を確立する」ためのやり取りなどの通信の細かい部分は、コア・ネットワーク・レイヤだけですべて処理できます。これに対してVoIPサービスやIPTVサービスなどの提供は、アプリケーション・サーバの機能となります。
つまり、コア・ネットワーク・レイヤでできることは、すべてコア・ネットワークに任せておいて、それよりもさらに高度なサービスを提供したいというときに、アプリケーション・サーバ・レイヤの当社の製品の役割になります。
■IMSの動きについて、もう少し具体的に説明していただけますか。
高山 例えば、NGNネットワーク上で、加入者情報を持つのは図1中の「IMS CORE NETWORK」の上にある「HSS」です。この加入者情報の問い合わせを例にとってみましょう。
問い合わせ情報が、SIPで入ってきたときに最初に受けるのは、図1中の「IMS CORE NETWORK」の上にある「P-CSCF」です。「P-CSCF」がまず、プロキシ(代理)としてSIPのリクエストを受けます。その後、「S-CSCF」に入って、ここから「HSS」と加入者情報をやりとりし、その後、必要があればアプリケーション層に渡すという動きになるように、コンポーネント・ブロックが決められています。
■他社でもSIPサーバを提供していますが、御社の「SIP Server」との違いは何ですか。
高山 2004年に「SIP Server」を発表した際、IMS CoreレイヤのSIPサーバが提供されていたので、競合すると勘違いされましたが、当社の「SIP Server」はあくまでIMSのアプリケーションレイヤ上のもので、他社で言えばSIPアプリケーション・サーバに該当します。
■SDPとIMSの位置づけについて説明していただけますか。
高山 教科書どおりに言うと、SDPはIMSの中のアプリケーション・レイヤを構成するものです。ただ、当社社内での共通意識として、SDPはそれだけではないという思いも強くあります。それは、SDPは単にIMSだけではなく、これまで通信事業者が提供してきた通話や位置情報といったサービスを、電話網だけでなく、インターネットやNGNなどの別なネットワークでも使えるようにしたり、サードパーティとつないで新しいアプリケーションでも利用することもできるからです。
このように、「SIP Server」は、キャリアがエンドユーザーに対して提供するときの実行環境(サービス・イネーブラ)なのに対して「Network Gatekeeper」は、キャリア・サービスとサードパーティ・アプリケーションの間に位置し、課金(Billing)やそれに絡むセキュリティなどのサービスを管理しています。
キャリアは、従来の通信事業のモデルから、新しいビジネス・モデルに軸足を移そうとしています。エンドユーザーを囲い込んでいくような新しいサービスだけでなく、ここからは自分たちが持っているサービスを他の企業に貸し出すことによって、収益を上げようということも考えています。
今、特に携帯キャリアは1人当たりからもらう収益(ARPU ※)がどんどん下がってきている状況にあります。こうした背景もあって、キャリアが自分たちのサービスを貸し出すというビジネス・モデルは、NGNを提供する通信キャリアだけでなく、既存の内外の通信キャリアにおいて、非常に新しい流れとなっています。
ですから、これから「Network Gatekeeper」の役割は、ますます重要になっていくと思われます。
※ARPU:Average Revenue Per User、契約者1人あたりの月額収入