≪3≫3GPP:両陣営の仕様を策定することで合意
3GPP会合における度重なる両陣営の激しい攻防戦の結果、GSM 20周年記念式典とも重なった2007年3月の3GPP TSG SA#35(※5)キプロス会合にて、GPRSベースおよびIETFベースの両者を仕様策定することで合意することになった。
※5 3GPP TSG SA#35:3GPP Technical Spesification Group Services and System Aspects 第35回会合、3GPP技術仕様化グループのシステム・サービス全般に関する会合
この結果、
(1)GPRSベースについては、主に3GPPが策定するLTE/SAE以前の既存のパケット交換ネットワークとの間のモビリティ制御に使用されること、
(2)またIETFベースについては、主に3GPPアクセス以外の3GPP2ネットワークやWiMAXネットワークとの間のモビリティ制御に使用されること
で棲み分けられることになる。
しかし、SAE内のモビリティ制御インタフェース(S5)や、異なる事業者との間のローミング・インタフェース(S8)については、両陣営の間で決着がつかなかったことから、GPRSベースおよびIETFベースの両プロトコル並存で仕様化することが決定された。図1にその概念図を示す。
≪4≫GTP vs. PMIP(プロキシー・モバイルIP)
図1に示すGPRSベースプロトコル部分については「3GPP TS 23.401」、IETFベースプロトコル部分については「3GPP TS 23.402」として、それぞれステージ2(アーキテクチャ)の仕様策定作業が進められている。また、両者の共通部分については3GPP TS 23.401に仕様策定することが合意されている。ステージ3(プロトコル)の仕様策定については、前者はGPRS(General Packet Radio Service)のためのGTP(※6)プロトコルを前提とし、また後者はIETFにおけるNETLMM(※7)検討の後継であるPMIP(※8)を前提として作業が進められている。なお、ステージ1(サービス・リクワイアメント)は3GPP TS 22.278に策定される。
※6 GTP:GPRS Tunneling Protocol、GPRSトンネリング・プロトコル。GPRSやW-CDMAネットワークなどにおいて、モビリティ(移動)管理を施すために、IPネットワークをトンネリングして、パケットを転送する技術。
※7 NETLMM:Network-Based Localized Mobility Management、移動端末が移動した場合にもIPアドレスの変更を行うことなく移動できるようにするモビリティ制御技術。
※8 PMIP:Proxy MobileIP、プロキシー・モバイルIP。モバイル端末に特別な仕組みを追加しないで、モバイルIPを実現する技術。
≪5≫GTP⇔PMIPのプロトコル変換ノードを提案
しかし、各移動通信事業者の網内に閉じたモビリティ制御の場合ならば各通信事業者内で解決できるが、移動通信事業者間のローミング・インタフェースにおいて異なるプロトコルが用いられることになると、ローミングを目的とした移動通信事業者間の相互接続において、プロトコル変換が必要になる。そのため、前述した3GPP TSG SA配下のWG(Working Group)であるSA2の2008年4月の会合において、IETFベースを推進する陣営によって、GTP⇔PMIPのプロトコル変換能力を配置することが提案され、現在策定中の仕様のAnnex(付録)に盛り込むことが合意された。
LTEの仕様策定完了が2008年12月に設定されていることに呼応し、SAEについては2008年6月会合にてステージ2仕様の策定がほぼ完了した。現在、2008年12月会合でのステージ3仕様の策定完了を目指して、3GPP内の関連WG(Working Group)において作業が急ピッチに進められている。