≪1≫当面は時速200km、次世代は時速350kmのモビリティに対応
片岡浩一氏
(UQコミュニケーションズ
執行役員副社長)
■ 図1、表1に示すように、UQ WiMAXサービスは5つ特徴を持っていると発表されています。この中で、モビリティ(移動スピードへの対応)については、モバイルWiMAX(IEEE 802.16e-2005)規格では、自動車で走る場合を想定して時速120kmとなっていますが、表1では200km超の高速移動にも可能となっています。この辺は実証されたのでしょうか。
片岡 シミュレーション実験を行いましたが、時速200kmまでは実用的に、メガクラス(Mbpsクラス)までのスループット(実効速度)が出ることを確認しています。
■ 新幹線のスピードへの対応にはもう少し高速化が必要ですね。
片岡 そうですね。WiMAXフォーラムでは、新幹線程度のスピードで利用できるような検討もあわせてやっています。具体的には、次世代のIEEE 802.16m規格では、時速350kmまでのスピードに対応できる仕様になっています。なお、当面、新幹線の中には無線LAN(Wi-Fi)のサービスが提供されますので、不自由するということはないと思います。
5つの特徴 | 内 容 | |
---|---|---|
1 | High Speed | 広帯域・大容量。下り最大40Mbpsを実現。将来は80Mbpsへの拡張を予定。 (実効速度はユーザーの利用環境によって異なる) |
2 | Mobility | 高速移動性。時速200km超の高速移動中でも利用可能。 |
3 | Always On | 常時接続。 |
4 | Global Standard | 世界標準規格。IEEE 802.16e-2005に準拠したモバイルWiMAX。 |
5 | OTA | Over The Air。WiMAXの電波でオンライン申込み(ショッピング)も可能。 |
≪2≫WiMAXモジュール内蔵のパソコンは2009年7月頃に登場
■ ところで、前回、差し込み型のWiMAX用データ通信カードを4機種紹介しましたが、これらを内蔵したWiMAXパソコンはいつ頃から市場に出てくるのでしょうか?
片岡 WiMAXチップ(モジュール)を搭載(内蔵)したノート・パソコンは、UQ WiMAXの有料サービスが開始される、本年の夏(2009年7月)ごろから市場に出てくると思います。
インテルでは、ユーザーがより簡単にWiMAXを利用できるように、すでに無線LAN(Wi-Fi)とWiMAXの両方をサポートする通信モジュールを内蔵したノート・パソコンを提供するために、国内外のノート・パソコン・メーカーと協力しています。したがって、今年(2009年)7月以降に、この通信モジュールを搭載したノート・パソコンが登場するようになると、ユーザーは、無線LAN(802.11a/g/n)もWiMAXも利用できるようになります。
また、表2に示すように、すでに、日本市場におけるWiMAXへの取り組みに賛同いただいている国内外のコンピュータ関連メーカーは、14社に上っており(2009年2月26日現在)、今年末から来年にかけて、いろいろなメーカーから多彩なWiMAX内蔵パソコンが出てくると思います。
メーカー名 | メーカー名 |
---|---|
ASUS(アスース)ジャパン(株) | (株)東芝 |
エプソンダイレクト(株) | 日本エイサー(株) |
オンキヨー(株) | NECパーソナルプロダクツ(株) |
クラリオン(株) | 日本ヒューレット・パッカード(株) |
シャープ(株) | パナソニック(株) |
ソニー(株) | 富士通(株) |
デル(株) | レノボ・ジャパン(株) |
≪3≫「WiMAX Wi-Fiゲートウェイセット」の開発
片岡浩一氏
(UQコミュニケーションズ
執行役員副社長)
■ ところで、WiMAXを屋外で使用する場合には、WiMAX端末は屋外のWiMAX基地局から電波を受信して通信しますが、帰宅して屋内(家庭内)に入った場合も電波は受信できるのでしょうか?
片岡 基本的にWiMAXで使用される電波の周波数は2.5GHz帯と高い周波数帯を使っているため、電波の性質上、家庭の中まで回り込んで家庭内に届きにくい面があります。
可能な限り家の中に届くようにさせようとはしています。ただし、その場合は、それなりの数の基地局が必要とされます。現在は基地局の建設途上のところです。そこで私たちは、WiMAX Wi-Fiゲートウェイを開発しました(図2)。
■ そのゲートウェイは、家庭内に設置され、外部からのWiMAXの電波を受信し、ゲートウェイから家庭内の端末(パソコン)へは無線LAN(Wi-Fi)の電波を飛ばして通信するのですか。
片岡 そうです。このたび、UQ WiMAXサービスの利用環境を向上させるために開発した「WiMAX Wi-Fiゲートウェイセット」(「UG01OKとUD01OK」、表3、表4参照)を、4月末から利用できるようにモニターの募集を行いました。
この「WiMAX Wi-Fiゲートウェイセット」は、
(1)WiMAX Wi-Fiゲートウェイ部分(UG01OK、表3:外部からのWiMAXの電波を受信して、Wi-Fiへ変換し、室内では無線LAN環境で通信できるようにするWiMAX⇔Wi-Fi変換機能〔注:ただし、4種のUQデータ通信カード(UD01SS、UD02SS、UD01NA、UD02NA)との接続(通信)はできない〕
(2)データ通信カード部分(UD01OK、表4):取り外し可能なUSBタイプのデータ通信カード機能〔ゲートウェイ部分(UG01OK)に装着し、パソコンと通信するためのUSBタイプのカード。この組み合わせで無線LANのアクセス・ポイントとなる)。このカードは、外部ではそのままWiMAXと直接通信できる〕
という「UG01OK」と「UD01OK」の2つがセットで構成されています(写真1)。これによって、屋内からはWi-Fi接続経由でWiMAXネットワークに接続できるとともに、外出時にはWiMAX用のUSBタイプのデータ通信カード(UD01OK)を単体として利用できるようになっています。
写真1-1 WiMAX Wi-Fiゲートウェイ部分(UG01OK) |
写真1-2 データ通信カード部分 (UD01OK) |
項 目 | 内 容 |
---|---|
製品名 | WiMAX Wi-Fi GATEWAY UG01OK |
無線動作モード | IEEE 802.11b/g 準拠 |
セキュリティ | (1)WEP(64/128ビット)、WPA-PSK、WPA2-PSKによる通信暗号化 (2)MACアドレスフィルタリング、SSIDの隠蔽 |
消費電力 | 7.5W(UD01OK装着、WiMAX接続時) |
サイズ (W×D×H) |
約120mm×35mm×90mm(突起物を除く) |
重量 | 約150g(ゲートウェイ本体のみ) |
製造元 | 株式会社OKIネットワークス |
WEP:Wired Equivalent Privacy、802.11で制定された無線LANの暗号方式
WPA:Wi-Fi Protected Access、Wi-Fiアライアンスによって制定され、WEPの弱点を強化した無線LANの暗号方式
WPA-PSK:WPA- PreShared Key、WPAにおける事前共有鍵。PSK2はWPAと互換性のある802.11iの暗号方式にフルに対応した暗号方式
SSID:Service Set Identifier、サービス・セット識別子。無線LANで基地局(アクセスポイントを識別するための識別子)
項 目 | 内 容 |
---|---|
製品名 | WiMAX USB TYPE UD01OK USB2.0準拠 |
対応OS | Windows Vista(R)32bit版、Windows(R) XP32bit版 (Service Pack2またはService Pack3)対応OSは日本語版 |
消費電力 | 2.5W(最大) |
サイズ (W×D×H) |
約35mm×15mm×74mm (USBコネクタ収容時、突起物を除く) |
重量 | 30g |
製造元 | 株式会社OKIネットワークス |
同梱物 | かんたん設定マニュアル(WiMAX接続編/Wi-Fi接続編)、保証書、CD-ROM(マニュアル)、ACアダプターなど |
--つづく--
プロフィール
片岡 浩一(かたおか こういち)
現職:UQコミュニケーションズ株式会社 取締役 執行役員副社長
【略 歴】
1985年 DDI株式会社入社
2002年 KDDIブロードバンド企画部長
2004年 KDDIブロードバンドコンシューマ事業本部プロダクト統轄部長
2005年 KDDIブロードバンドコンシューマ事業企画部長
2006年 KDDIネットワークソリューション事業本部
ネットワークソリューション事業企画部長
2007年 KDDIソリューション事業統轄本部 ソリューション商品企画本部長
ワイヤレスブロードバンド企画株式会社
(現、UQコミュニケーションズ株式会社) 取締役
2008年 現職に至る