[スペシャルインタビュー]

真のモバイル・ブロードバンド時代を実現するUQ WiMAXのサービス戦略を聞く(第2回)

2009/04/09
(木)
SmartGridニューズレター編集部

UQコミュニケーションズは、去る2009年2月26日から、どこでもブロードバンド・アクセスを可能とする「UQ WiMAX」サービスを東京23区・横浜市・川崎市の一部で開始。オープンなモバイル・ブロードバンド時代の幕開けを告げた。この歴史的な「UQ WiMAX」サービスは、モバイルWiMAX(IEEE 802.16-2005)に準拠した世界基準のブロードバンドであり、大きな注目を集めている。ここでは、UQコミュニケーションズ(株)取締役 執行役員副社長の片岡 浩一(かたおかこういち)氏に、同社のモバイルWiMAXの取り組みの経緯から、「UQ WiMAX」サービスへのユーザーの反響、WiMAXにおける新しいビジネス・モデル、さらに今後の展開などをお聞きした。
今回(第2回)は、WiMAXによる携帯電話と異なる新しいビジネス・モデルの内容や、具体的なUQ WiMAX用の4種類のデータ通信カードやシステムの特徴などを中心に語っていただいた。
(聞き手:インプレスR&D インターネットメディア総合研究所)

真のモバイル・ブロードバンド時代を実現するUQ WiMAXのサービス戦略を聞く

≪1≫携帯電話と異なる新しいビジネス・モデル:UQ WiMAX

■ 片岡副社長がWiMAXのビジネスの立ち上げに努力された、2007年3月頃から今日までの期間は大変重要期間だったように思います。片岡副社長のWiMAXに関する取り組みの経過を簡単にお話ししていただけますか。例えば、auの事業としてCDMA2000のサービスをやっているのに、なぜWiMAXをやる必要があるのか。またCDMA2000の次世代システムとして、いろいろなシステムを検討されたと思いますが、結論としてLTE(Long Term Evolution)もやる、WiMAXもやるということは、会社として大きなソリューションの選択だったと思います。その辺のいきさつはどうだったのでしょうか。

片岡浩一氏(UQコミュニケーションズ執行役員副社長)
片岡浩一氏
(UQコミュニケーションズ
執行役員副社長)

片岡 次世代システムについては、その当時は、現在の延長線上のCDMA2000系の1xEV-DO Rev.Bにするか、UMB(Ultra Mobile Broadband)にするか、あるいはWCDMAの進化版であるLTEにするのかというところは検討中であったため、決まっていませんでした。ただ、どのような次世代システムを選択しても、基本的には今の携帯電話のビジネスの世界での延長線上となってしまう面がありました。しかし、WiMAXは、「単なる携帯電話の延長線上のビジネス・モデルではない」という結論に達しました。つまり、今後は「真のモバイル・ブロードバンドの時代がくる」ととらえ、これに賭けようというところがありました。

■ それは、新しいチャレンジですね。

片岡 利用者から見ると、単にWiMAXのほうがデータ通信における伝送速度が速くなるというようにしか見えないかもしれませんが、WiMAXのビジネス・モデルの組み立て自体が、従来のオペレータ(通信事業者)中心の垂直統合的な移動通信技術の世界と違うというところに注目しました。このようなことから、WiMAXは KDDIグループとしては手をつけておかないといけない方式だということで選択しました。

■ その場合、最近特に話題になり注目されていることに、知的財産権の問題があります。移動通信におけるITU系のWCDMAやCDMA2000のライセンス料(特許料)や、新しいIEEE 802系のWiMAXのライセンス料などの検討もあったかと思いますが、この辺についてはいかがでしょうか。

片岡 それは確かにライセンス料の面から見ますと、従来の移動通信システムに比べIEEE 802系(WiMAX)はオープンですし、私たちがある半導体企業からWiMAXチップを買う場合に、WiMAXチップに対して別途多額のライセンスを払うということもありません。

またWiMAXのチップにつきましても、どこかのベンダーが特許を独占してつくるということでもないため、参入したい実力があるベンダーはどこでWiMAXチップをつくれますし、このチップセットを購入してWiMAXビジネスを展開できる環境となってきています。

■ WiMAXによる通信ビジネスへの参入障壁は低いということなのでしょうか。

片岡 そうですね。それは、私どものようなキャリアだけでなくて端末をつくるメーカーも同じだと思います。

≪2≫WiMAXは水平統合型のビジネス・モデル

■ WiMAXは、よく技術的にオープンな環境にあり水平統合型のビジネス展開がしやすいといわれます。一方、KDDIなどの既存のモバイルキャリアは垂直統合型ですね。このため、例えば、端末はauブランドで、auのショップなどで売っています。WiMAXの場合は、その辺はどうなのでしょうか。

片岡 WiMAXの場合は、わたくしたちは基本的にはオープン・デバイスと呼んでいますが、端末自体は垂直統合でなくて、端末メーカーが自由につくれるように推奨しています。例えば、世界で新しいWiMAXのチップのメーカーが次々に誕生しています。そこからWiMAXチップを買いつければ、誰でもWiMAX製品をいくらでもつくることができます。

■ 具体的にどのようなWiMAXチップメーカーがあるのですか?

片岡 現在、WiMAXチップには4つの主流の専業メーカーがありますが、具体的には米国のビーシーム(Beceem Communications)やGCT(GCT Semiconductor)、フランスのシーカンス(Sequans Communications)、サムスン電子です。もちろんインテルや富士通マイクロエレクトロニクスなどからも提供されています。

≪3≫UQ WWiMAX用の4種類のデータ通信カード

■ そのWiMAXチップを使用したユーザー側の端末側で使用するデータ通信カードは、どのようなタイプのものがありますか。

片岡浩一氏(UQコミュニケーションズ 執行役員副社長)
片岡浩一氏
(UQコミュニケーションズ
執行役員副社長)

片岡 はい、写真1表1に示すように、すでに4種類のデータ通信カードを提供していますが、具体的にはUSBタイプが2機種、カード・タイプが2機種(PCMCIAおよびExpress)です。製造は「UDO1SS/UDO2SSカード」の2種類が兵庫県姫路市に本社をもつ(株)シンセイコーポレーションです。また、「UDO1NA/UDO2NAカード」の2種類は、静岡県掛川市に本社をもつNECアクセステクニカ(株)が製造しています。

■ モニターから人気のあるカードはどれでしたか

片岡 2009年2月26日からお試し期間のサービスが開始され、すでに5000名のモニターの方々にご利用いいただいています。この4種の中で、USBポートはほとんどのパソコンについているので、最初はUSBタイプが使い勝手が良いと思いますが、つなぎっぱなしの場合には、抜き差しがいらないカード・タイプのほうが便利のようですね。


写真1 UQ WiMAXデータ通信カード「4種類」の外観。左側がUSBタイプで、上が「UD01SS」、下が「UD01NA」。右側がカード・タイプで、上が「UD02SS」、下が「UD02NA」(クリックで拡大)


表1 UQ WiMAXデータ通信カード「4種類」の仕様

UD01SS/UDO2SSカード
項 目 UD01SSカード UD02SSカード
タイプ WiMAX USBタイプ WiMAX Express Cardタイプ
インタフェース USB2.0準拠 ExpressCard/34準拠
製造元 (株)シンセイコーポレーション (株)シンセイコーポレーション
開発元 韓国:モダコム
(MODACOM CO.,LTD.)
韓国:モダコム
(MODACOM CO.,LTD.)
サイズ/重量 幅27×奥行62×高さ11(mm)/18g 幅36×奥行110×高さ11(mm)/30g
UDO1NA/UDO2NAカード
項 目 UD01NAカード UD02NAカード
タイプ WiMAX USBタイプ WiMAX PCMCIA Cardタイプ
インタフェース USB2.0準拠 PC Card Standard Type準拠
(32ビットCardBusインタフェース)
製造元 NECアクセステクニカ(株) NECアクセステクニカ(株)
サイズ/
重量
幅33×奥行110×高さ20(mm)/37g 幅54×奥行124×高さ8(mm)/40g

≪4≫WiMAX基地局は現在約500カ所:サムスン電子製

■ ところで、御社のWiMAXシステムについて、例えば、今回のシステムの基地局にはどこの製品が使用されているのでしょうか。

片岡 基地局に関しては、屋外基地局も屋内基地局も韓国のサムスン電子製で、その外観と仕様を写真2写真3および表2に示します。現在500位の屋外基地局が設置されています。また、基地局に関しては、現在、富士通でも開発が進められています。

■ 韓国のサムスン電子の基地局を選択された理由は、韓国で2006年6月からKT(Korea Telecom)とSKテレコムから商用サービスが開始されている韓国版WiMAXといわれる「WiBro」(ワイブロ。Wireless Broadband)で実績があるからということですか。それとももっと違う理由があったのでしょうか。

片岡 たしかにサムスン電子の製品は、韓国のWiBroサービスでの実績がありますが、私たちのWiMAXシステムの仕様に関するリクエストに対してどこまで提案できるか、さらに実際の製品を評価し、製品をつくる製造能力や納入時期も含めて評価して選択しました。


下:写真2 WiMAX用の屋内基地局。右:写真3 WiMAX用の屋外第一号基地局(クリックで拡大)


表2 UQ WiMAX基地局(サムスン電子製)の仕様

  屋外基地局 屋内基地局
特徴 高出力20Wの小型軽量装置を開発 屋外基地局とほぼ同等の機能を持ちイーサネットケーブルとスイッチを用いて容易に屋内のWiMAXエリア化を可能にした
周波数 2.5~2.6GHz帯 2.5~2.6GHz帯
帯域幅 10MHz幅 10MHz幅
チャネル
(キャリア)数
2 1
送信出力 10W×2 200mW×2
アンテナ 2Tx(送信側2本)、2Rx(受信側2本) 2Tx(送信側2本)、2Rx(受信側2本)
MIMO MatrixA、MatrixB MatrixA、MatrixB
消費電力 320W(Typ) 65W(Typ)
サイズ 335×450×175mm(26リットル) 255×200×39mm(1.9リットル)
重量 25kg 2.5kg

(注)MatrixA、MatrixB:モバイルWiMAXの下り通信の場合に、空間多重によって伝送速度を向上させたり、信号のゲインを得るための仕組みで、WiMAXの無線インタフェースがサポートするMIMO空間多重/送信ダイバーチを利用する。

■ そのほか、UQ WiMAXシステムを構成する製品は?

片岡 3G携帯電話システムのRAN(Radio Access Network、無線アクセス・ネットワーク)と同じような機能を提供するASN(Access Service Network、アクセス・サービス・ネットワーク)は「基地局とASNゲートウェイ」で構成されますが、ASNゲートウェイ(ASNとほかの機能部の接続機能を提供する部分)は日立製作所が担当しています。また、契約した端末の接続要求に対して認証して接続を承認する機能や、課金などの目的のために、通信の記録を取得する機能を持つAAA(Authentication Authorization Accounting、接続の認証・承認・課金)の部分はCTCが担当しています。

--つづく--

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真のモバイル・ブロードバンド時代を実現するUQ WiMAXのサービス戦略を聞く(第1回)


プロフィール

片岡浩一氏(UQコミュニケーションズ 執行役員副社長)

片岡 浩一(かたおか こういち)氏

現職:UQコミュニケーションズ株式会社 取締役 執行役員副社長

【略 歴】
1985年 DDI株式会社入社
2002年 KDDIブロードバンド企画部長
2004年 KDDIブロードバンドコンシューマ事業本部プロダクト統轄部長
2005年 KDDIブロードバンドコンシューマ事業企画部長
2006年 KDDIネットワークソリューション事業本部
    ネットワークソリューション事業企画部長
2007年 KDDIソリューション事業統轄本部 ソリューション商品企画本部長
    ワイヤレスブロードバンド企画株式会社
    (現、UQコミュニケーションズ株式会社) 取締役
2008年 現職に至る


 

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