[視点]

日本型スマートグリッド発展への提言

30年後を見据えた新しい都市の在り方実現に向けた提言
2015/01/01
(木)
東大グリーンICTプロジェクト Beyond2020検討チーム

ICT基盤の利活用

 分散化されたエネルギー供給源を活用した街づくりを進めていくためには、地域のエネルギー需要と供給にかかわる情報をリアルタイムに収集・分析し、フィードバックする仕組みを構築していくことが必要である。

〔1〕標準化規格による相互接続性の確保

多様な施設の多様な設備の情報を収集・管理することが必要になるため、マルチベンダ・マルチシステムを想定したプラットフォームを構築することが重要である。

東大グリーンICTプロジェクト注12では、スマートグリッドにも適用することが可能な国際標準通信規格IEEE 1888(UGCCNet:Ubiquitous Green Community Control Network)の研究開発を進めている。

IEEE 1888は、さまざまな設備の情報、および設備が利用する通信プロコトルを汎用的に取り扱うことが可能となるように設計された通信規格であり、多棟BEMSの領域で導入・運用実績を積んでいる。

このようなオープンで誰もが利用可能な規格を活用してシステムを構築することが、プラットフォームを展開するうえで重要になる。

〔2〕セキュリティの確保

一方で、こうしたインフラは、地域住民の安心・安全にも直結するため、しっかりとセキュリティを確保することが重要である。政府においても2014年5月19日に「重要インフラの情報セキュリティ対策に係る第3次行動計画」注13が決定されるなど、重要インフラのセキュリティを確保することの重要性が示されている。

そのため、こうした仕組みを構築する際には、セキュリティ対策にかかわる検討も同時並行的に実施していくことが重要である。

さいごに

 実際に街づくりを進めるうえでは、地域にどの程度利活用可能なエネルギー源があるか、またどの程度の需要が存在するかを見極めながら、最適な規模のCEMSを構築することが必要である。そのため、技術的な実証を行うとともに、最適なCEMSの在り方について、ディベロッパー、ゼネコン、メーカー、ベンダなどとともに検討を行っていくことが重要である。

◎Profile

東大グリーンICTプロジェクト Beyond2020検討チーム

東大グリーンICTプロジェクトは、2008年に発足した産学連携のコンソーシアム。先端的ICT技術を用いたスマートなビルやキャンパス、さらには街(シティ)を実現することで、節電・省エネを実現し地球温暖化へ貢献する。

また「スマート化」を行うことで、活動の効率化、自然災害や事故などに対する危機対策(BCP:Business Continuity Plan)の強化、さらに、新しいライフスタイルやビジネスを創生・創造することを目的としている。

東京大学本郷キャンパス内にある工学部2号館(地上13階建て)を用いた技術検証からスタートした活動は、すでに国内外のビルやキャンパスにおいて、ICTを用いた設備の管理・制御のみではなく、システム全体のエコシステム化、システム間での協調によるエコシステムの設計へと進化・展開されている。

「Beyond2020検討チーム」は、2020年に開催予定の東京オリンピック・パラリンピックを契機に、さらにその先の東京地域のスマート化に関する具体的な提言をまとめるために集まった有志によるタスクチーム。


▼ 注12
東大グリーンICTプロジェクト:http://www.gutp.jp/

▼ 注13
http://www.nisc.go.jp/conference/seisaku/index.html、第39回会合(平成26年5月19日)、報道発表資料「重要インフラの情報セキュリティ対策に係る第3次行動計画」

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