再生可能エネルギーによる発電も「1つの機器」
スマートグリッド(Smart Grid)を実現する構成要素として、再生可能エネルギーあるいはマイクログリッド(Micro Grid)という表現がよく出てくるようになった。再生可能エネルギーとは、石油やLNGなどの化石燃料ではなく、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを利用して発電した電源ということである。この新しく普及し始めた太陽光発電や風力発電などは、電力会社から見ると、それが「再生可能エネルギーで発電した電源かどうか」が重要ではなく、単に「新たな電力を発生する機器」であり、基本的には、IPP(独立発電事業者、後述)などと同じように、電力システムに新たに接続される「1つの発電システム」に過ぎない。
また、マイクログリッドは、図1に示すように、電力会社側(サプライサイド)の基幹の電力システムのような大きなグリッド(電力網)ではなく、主に需要家側(デマンドサイド)に設置される、太陽光発電や風力発電などの複数の分散型電源や、蓄電池(電力貯蔵システム)を組み合わせて制御し、その地域に最適な電力を供給する小規模な電力網(マイクログリッド:分散型電源)である。
図1 分散型電源(マイクログリッド)のイメージ
〔出所 新井 宏征「世界のマイクログリッドと再生可能エネルギー2011」2011年7月、インプレスR&D。NEDO資料参照〕
歴史的に見るスマートグリッド:電力の自由化がスタート
次に、このマイクログリッドやスマートグリッドが登場した背景を、表1を見ながら歴史的に見てみよう。
表1 日本におけるスマートグリッドの検討経緯
〔出所 合田忠弘「IECのスマートグリッド戦略を聞く!」、インプレスR&D、WBB Forum、2011年8月、http://wbb.forum.impressrd.jp/feature/20110925/854 http://www.inpit.go.jp/content/100060434.pdfをもとに一部加筆して作成〕
日本では、1990年代の後半に、世界的な規制緩和の流れを受けて「電気事業法」が改正(1995年)された。これに伴って、独立系発電事業者(IPP。卸供給事業者とも言われる)の発電市場への参入が可能となるなど、部分的ではあったが電力の自由化がスタートした。このため、電力の供給側において、次世代の電力網の研究が活発に行われた。当時、日本ではマイクログリッドのことは、「フレキシブルネットワーク」(Flexible Net-work)などと呼ばれていた。
2000年代の前半になると、国際的に地球環境問題が注目されるようになり、これに対応する分散型電源時代を迎えた。分散型電源は、一般家庭や地域などの電力の需要側に注目したもので、日本では「マイクログリッド」、米国では「インテリグリッド」、欧州では「スマートグリッド」など、国の事情によってさまざまな呼び方がされていた。
さらに、2000年代後半を迎えると、CO2などによる地球温暖化が国際問題となり、低炭素社会の実現に向けて、国際的に「スマートグリッド」という用語が定着し始め、情報通信技術(ICT)を利用して、
- 「サプライサイド」(電力供給側)
- 「デマンドサイド」(電力需要側)
を協調させ、電力の安定的な供給と効率的利用を目指す動きが活発化してきた。
また、この「スマートグリッド」の実現に向けては、各国や地域によって電力事情が大きく異なっているため、そのアプローチの仕方も異なっている。例えば、米国では、
- 電力網などが老朽化しているため、電力網の再構築と強化
- デマンドレスポンスなどの導入によって、電力供給の信頼度の向上や電力システム(系統)の運用の効率化
など「供給信頼度向上型」のスマートグリッドの構築が重視されている。一方、日本や欧州は、
- 再生可能エネルギーの積極的な導入(欧州:太陽光/風力、日本:太陽光)
- 一次エネルギー(例:石油、ガス)セキュリティ(セキュリティ安全保障)の確保
など「再生可能エネルギー導入型」のスマートグリッドの構築が重視されている。