1.2 世界の位置情報ビジネスの市場規模
GPSデバイスやセンサーネットワークが拡大し、さまざまなビジネス分野に浸透していった結果、「位置情報ビジネス」の範囲を正確に決めることは難しい。ここでは、いくつかの分野での指標を紹介する。
ReportsnReports.com注1によると、ソリューションベースでの世界の室内測位ビジネス市場(Indoor Location Market by Solution)は、CAGR(Compound Average Growth Rate:年平均成長率)で2014年から2019年にかけて36.5%成長すると見られている。アジアパシフィックが市場を牽引し、利益面では北米がもっとも大きな市場となるとされている。CAGRの算出に利用された企業は、Apple、Google、Microsoft、Broadcom、Ciscoおよびその他の新しい技術をもったスタートアップとされている。
リサーチによると、GPS衛星の電波が届かない室内においても位置情報を把握したいというニーズは大きく、すでに実現可能な技術とデバイス自体は開発されているが、普及するにはインフラ側の負担が少ないものである必要があり、屋内測位を必要とするアプリケーションの普及率など、いくつかの要素が絡んでくるとしている。
一方、同社の別のレポート、「Global Indoor Location-based Service (LBS) Market 2014-2018」(2014年から2018年までの世界の屋内位置情報サービス市場)では、年平均成長率で2013年から2018年にかけて49.42%成長するとされている。含まれるサービスの内訳は、
(1)屋内位置情報サービスソフトウェア、アプリケーション、ミドルウェア、プラットフォームなどのライセンシング
(2)屋内位置情報サービス向けのデバイスの売上
(3)屋内位置情報サービス向けの地図およびナビゲーション、トラッキング、モニタリング、緊急サービスおよび分析
(4)屋内位置情報サービス検索および公告の利益
(5)商業施設や政府施設、公共施設、学校、医療などの重要な施設で使われる屋内位置情報サービス
となっている。
一方、BERG Insight社のリサーチ、LBS Research Series 2014(Mobile Location-Based Services Market)注2によれば、位置情報サービスは、スマートフォンの普及にともなって主要な市場となっているとしている。スマートフォンの普及率は、2013年末には北米で67%、EU諸国で58%であり、EUのスマートフォンユーザーのうち50%は位置情報サービスをよく使うユーザーであると見積もられている。
北米の場合はGPS内蔵デバイスが多く、スマートフォンユーザーの60%超の人々が日常的に位置情報サービスを使っているという。このようなユーザーの増加は、特にGoogleやFacebookなどといったリーディングカンパニーの利益の大幅な成長につながっており、2013年のEU諸国内での位置情報サービス市場の利益は7億3,500万ユーロ注3となっている。また、Berg Insightの予測では、2018年には23億ユーロまで成長するとされている。北米に関しても、2013年の18億ドル注4の利益から、2018年には38億ドルまで成長すると予測されている。主な収益源はソーシャルネットワークやロケーション検索内での広告であるが、モバイルで分析やロケーション広告などといったさまざまな企業向けのサービスも、向こう数年北米やヨーロッパでの市場を急激に拡大すると見られている。
また、同資料では、位置情報連動広告配信サービスについても記載されている。センサー情報の増加により、ユーザーの属性情報だけではなくリアルタイムな場所に応じた広告を配信できるようになることは、市場の拡大に大きく貢献すると考えられる。
ロケーション情報と、その他のコンテキスト情報や行動情報を加味して広告を配信することで、モバイル広告の適切性を向上させる。Berg Insightの予測によると、2013年のリアルタイムのモバイル広告市場は、全体のモバイル広告市場のうち14.5%を占める12億ユーロで、年平均成長率ベースで54.0%成長することで2018年には107億ユーロまで成長するとされている。ロケーションベース広告とマーケティングが、デジタル広告市場の7%を占める計算である。
2018年には、LBSマーケットにおいて、北米、EUに続きアジアパシフィックが最大規模となると予測されている。
▼注4
2014年12月18日現在のレートでは、1米ドル=118円。