WPTによる商用化のシナリオ
〔1〕50W以上は2015年以降に商用化
このような、活発な各アライアンスの動きとともに、今後のワイヤレス電力伝送(WPT)のビジネスも急速に進展しようとしている。
WPTにおける当面の商用化のシナリオを示すと、図2のようになる注6。現在は、前述したように、送電電力が5W以下のWPTが商用化されているが、50Wクラス以上についての家電機器用については、2015年以降に商用化が行われるシナリオとなっている。
また、電気自動車用(送電電力:数kW以上)も2015年以降に商用化が行われようとしており、そのほか電力カートや福祉用機器などへの適用も検討されている。
図2 WPTによる商用化のシナリオ(家電機器、電気自動車)
〔出所 庄木裕樹、「第20回 EMC環境フォーラム」、2014年12月4日より〕
〔2〕WPTでは50Wが大きな境界領域
前出の図2でもわかるように、WPTでは「50W」という電力伝送が1つのポイントになっている。これは、日本の現行の法制度からきている制約である。現行の法制度においては、最大50W以下でWPTを実用化する場合、「50W以下でかつその送電時に同じ周波数を利用して通信を行わなければ(電力伝送のみであれば)比較的自由に使える」という制度になっている。
〔3〕「高周波利用設備」という現行の枠組み
日本の現在の電波法の中に、「高周波利用設備」という枠組みある。これは、「通信を行う無線機器以外の設備で、高周波を使う設備のこと」であり、この「高周波利用設備」には「設置許可不要設備」という枠組みがある注7。
つまり、「通信を行わない電力伝送だけを行う装置で50Wを超えなければ、個別の許可は不要になる」ということである。このことから、50W以下のWPTであれば、現行制度での利用も可能となっているのである。図2の下段に、「2014年までは現行制度の枠組みで何とか対応、しかし2015年以降はWPT用の制度化が必要」と書かれているのは、このような背景からである。
WPTの利用シーンによる分類
このような制約のある背景を考慮して、ワイヤレス電力伝送の利用シーンによる分類を示すと、図3のようになる。
図3 ガイドラインVer2記載の利用シーン
〔出所 BWFのWebサイト、http://bwf-yrp.net/menu-03-06-01.html〕
図3は、縦軸に電力の伝送距離を、横軸に送電電力を示したものである。ここでは、利用シーン1〜5を示しているが、表2に、これらのワイヤレス電力伝送の各利用シーンの主な内容を示す。
表2 WPTの各利用シーンの主な内容
WPTにおける標準化の動向
このようなWPTの多様な利用シーンに対応して、国内外では標準化活動も活発化している。
図4に日本国内の標準化および国際標準規格化の動向を示すが、日本においてはBWF(ブロードバンドワイヤレスフォーラム)が図2に示した商用化のシナリオに合わせて、標準化規格(ARIB規格)を策定し、ARIB規格以外の標準については、関連組織と連携して進めている。国際標準化については、家電関係はIEC TC100など、電気自動車(EV)関係はIEC TC69/PT61980(PT:Project Team)などで行われている。
図4 日本国内および国際標準規格化の動向
〔出所 庄木裕樹、「第20回 EMC環境フォーラム」、2014年12月4日より〕
▼ 注6
http://www.soumu.go.jp/main_content/000185972.pdf
▼ 注7
http://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/others/highfre/index.htm#4000133