[スペシャルインタビュー]

東芝のスマートグリッド国際戦略≪後編≫

― エネルギー産業の再編と新ビジネスモデルの展開―
2015/01/29
(木)

東京電力のスマートメーターの設置状況

図1 東京電力におけるフィールド検証と正式サービス開始のスケジュール

図1 東京電力におけるフィールド検証と正式サービス開始のスケジュール

〔1〕東京電力:2015年7月からの本格運用へ

─編集部:ところで、東京電力管内におけるスマートメーターの設置状況は、どのようなフェーズなのでしょうか。

横田:東京電力が宣言しているように(図1)、2015年7月からの本格運用に向けて、現在(2014年12月時点)、フィールドも含めた検証ステージにあります。

 具体的な内容は、前編(2015年1月号)でもご説明したスマートメーター通信システムを都内各所から構築しています。

〔2〕東京・府中と米国・ミネソタ州で連携して実証

─編集部:現段階では、まだ通信機能に関する技術検証のようですが。

横田:はい。通信システムの構築と同時に、当社で2カ所、東京電力において小平地区などで実証試験を行っています。

 まず、図2に示す当社の東京・府中事業所において、通信方式からBルート/HEMSに至る実証試験を行っています。また、戸建住宅・集合住宅(マンション)など、実フィールドでの調査検証なども行っています。

図2 実用を強く意識した試験検証

図2 実用を強く意識した試験検証

 東芝の府中事業所は縦横とも約1㎞近くあります。ここに実際のスマートメーターを1,000台規模で設置して試験を行っています。

 また、実フィールドでの検証ということでは、東京電力が定めた東京都内の地域に、数千台規模のスマートメーターを設置し、実際にきちんと双方向通信ができ、電力情報の送受信ができるかどうかの実証を行っています。

 さらには、米国ミネソタ州やインドのランディス・ギアにも試験環境が整備されていて、府中事業所とイントラネットで結び、双方でスマートメーター向け通信システム(AMI)やメーターデータ管理システム(MDMS)、ホームソリューションなどのさまざまな検証を24時間体制で進めています。

─編集部:スマートメーターの設置設計で、とくに留意されているところは?

横田:東京電力がもっとも重視する点は、都市の混雑したところで、きちんと通信できるかどうかということです。現在、東京の繁華街に設置したスマートメーターでは、Aルートで無線マルチホップ通信(920MHz帯、IPv6通信)を行い、こと細やかに情報収集を行い調査・分析しています。

 このように、府中事業所で行っている1,000台規模の試験で検証した内容に近い形で、実フィールドでも検証ができています。

 なお、1台のコンセントレータ(情報収集装置)では、数百台規模のスマートメーターから情報を収集し、管理しています。また、マルチホップ通信の平均のホップ数は3〜5ホップ(能力的には10数ホップも可能)程度になっています。

付随する関連ビジネスへの展開:エネルギー資産サービス(EAMS)とエネルギー資産配分サービス(EAAS)

─編集部:先ほど、米国の状況などもお話しいただきましたが、改めて、東芝としての国際戦略をお聞かせください。

横田:当社の海外におけるスマートグリッドの国際戦略という観点では、表1に示すように、ブラジル、フランス、米国、英国などの海外では、ランディス・ギアを中心としたビジネスを展開しています。ここで、英国の例を紹介しましょう。

表1 ランディス・ギア社(東芝グループ)の最近の主なビジネス展開の例

表1 ランディス・ギア社(東芝グループ)の最近の主なビジネス展開の例

 ランディス・ギアは、2013年9月、英国のブリッティシュガス社から、電力用スマートメーターとガス用メーターを複合化するビジネスの主要コンポーネントとなる両メーターを、1,200万台規模で受注しました。また東芝は、これらのメーターがつながるハブを受注することに成功しました。

 このように、スマートメーターだけでなく、それに付随するHEMSなど関連ビジネスへの展開も、今後は期待できると考えています。

 さらに、今後ランディス・ギアは、米国でスタートしているさまざまなアグリゲータやIPPプレイヤーからのサービス受託事業を受注し、それらの業務支援を代行するビジネスをどんどん広げていこうと考えています。

 このようなビジネスには、2つのカテゴリーがあり、1つはEAMS(Energy Asset Management Service、エネルギー資産管理サービス)と呼んでいます。単なるエネルギー管理サービスではなく、アセット(資産)として、発電事業者、送配電事業者、需要家のビジネスをサポートします。

 もう1つは、EAAS(Energy Asset Alloca-tion Service、エネルギー資産配分サービス)と呼んでいますが、すべてのプレイヤーが納得するよう、アセットを配分する仕組みを提供するものです。

 これらのサービスによってエネルギーを公平に認識し管理することで、アセットの概念を拡大します。そのうえで、当社が世界中で実証してきたビジネスモデルや技術を、導入する国や都市に応じてカスタマイズし訴求していくことになります。

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