株式会社大林組(以下:大林組、東京都港区、社長:白石 達)は、技術研究所(東京都清瀬市)においてスマートエネルギーシステムを完成させた。今後は運用を通じて導入効果を実証し、ノウハウを蓄積することで、エネルギーに関する市場からのさまざまなニーズに応えていく。
完成したスマートエネルギーシステムは、分散させた大型電源(太陽光発電設備、マイクロコンバインド発電システム、大型蓄電池)をEMS(エネルギーマネジメントシステム)によって制御することで、再生可能エネルギーを最大限利用するとともに、ビッグデータなどを用いた電力需給の予測とリアルタイムでの電力需要の把握に基づき、時々刻々と変動する需給バランスを調整する。(図1)
図1:大林組技術研究所スマートエネルギーシステムの概要
システムの構築に当たっては、SCIM(Smart City Information Modeling)※1を導入し、EMSとリンクさせることで電力の制御、管理の状況を「見える化」する。ピーク電力の低減によって商用契約電力の削減を図るとともに、各運転モード(ランニングコストの最小化、商用電力量の最小化、CO2排出量の最小化)の効果や、今後導入が高まると予想されるDR(デマンドレスポンス)※2についても実証を行えるなど、ノウハウを蓄積する環境が整えられている。(図2)
図2 :SCIM見える化画面
大林組技術研究所では、2015年の商用電力量を、システム構築前の2012年比で約20%(1000MWh/年)、CO2排出量についても約20%(450t-CO2/年)の削減をめざす。
システムの中心技術であるEMSの構築は、早稲田大学先進グリッド技術研究所の林泰弘所長の協力を得ている。
【スマートエネルギーシステムの特長】
- 大規模な再生可能エネルギーを中心とする多様な電源の有効活用
次世代のスマートシティを想定し、技術研究所には通常稼働時の消費電力にほぼ匹敵する820kWの太陽光発電システムに加え、これを安定かつ有効に活用するために出力500kW、容量3000kWhの大型蓄電池と、450kWのマイクロコンバインド発電システム※3を導入している。このように電源を分散し、最適に活用することで商用電力のピークを3割以上低減し、電力負荷の平準化やエネルギーコスト削減を目指す。
- ビッグデータなどを活用したエネルギーの需給予測とリアルタイムでの需要把握により、発電・蓄電・節電をコントロール
発電・蓄電・節電をコントロールするEMSは「天気・気温・日射などの外部情報」「空調・照明・その他機械類の稼働状況を含む内部情報」「過去の運用実績データ」を解析し、高精度に電力需給を予測するとともに、直近の気象情報を用いた短期の太陽光発電量の予測機能も有する。また、在勤者から建物の使用予定をリアルタイムで収集し、予測の基礎データに反映(デマンドナビ)※4することも可能。さらに、電力のひっぱく時には在勤者に向けてメールを発信し、使用量の低減を図る具体的な行動を促す。(図3)図3 :スマートエネルギーシステムのEMSフロー
- BCP(※5)対応として有効
大林組技術研究所では大規模な電源を分散して確保しているため、地震などによってインフラ(商用電力、都市ガス、水道)が停止した場合でも、非常時対応の職員50人が7日間程度、日常業務を遂行することが可能としている。スマートエネルギーシステムの構築は、日常のエネルギー使用量の低減を図るだけでなく、BCP対応にも有効。
※1:SCIM(Smart City Information Modeling、商標登録済)
コンピューター上に街を丸ごと再現し、計画段階におけるシステムの最適設計や環境シミュレーション、施工段階における不具合防止、運営段階におけるエネルギーの見える化やインフラの維持管理など、街づくりのあらゆる段階でさまざまなサービスを提供するプラットフォーム。
※2:DR(デマンドレスポンス)
電力会社などからの要請に応じて利用者が電力の使用量を削減することおよびその仕組み。
※3:マイクロコンバインド発電システム
200kW級のガスエンジン発電機2基とその排熱を用いた小型タービン発電機から成る常用発電システム。
※4:デマンドナビ(商標登録済)
事業所における当日以降の電力負荷変動および最大電力を算出するためのプログラム。照明や空調などのベース負荷に、特殊負荷(実験機器など)の使用予定をユーザーが入力することにより、その日の電力負荷曲線を作成、最大電力を想定する。
※5:BCP
Business continuity planning。事業継続計画のこと。
■リンク
大林組