日本工営は2018年2月22日、電力業者向けの蓄電池制御システム「NK-EMS」を開発したと発表した。NK-EMSは、大きく分けて電力系統における需給バランスの調整と、送電周波数維持の2つの機能を持つ。
全世界で再生可能エネルギーを利用する発電設備が増加している。特にヨーロッパでは、北海の遠浅な海底を活用した大規模風力発電所が大量に存在し、莫大な量の電力をヨーロッパ各地に届けている。再生可能エネルギーの中でも導入が進んでいる太陽光や風力は、時間帯や天候で発電量が大きく変化する。この影響で、ヨーロッパの送電網では送電周波数が不安定になることが多くなっている。
日本工営が今回開発したNK-EMSは、イギリスの送電事業者National Gridが採用を決めている。日本工営とNational Gridは採用決定前の2018年1月、National Gridの蓄電システム(アメリカメーカー製)とNK-EMSの実機接続試験を実施し、National Gridの要求仕様を満たすものと合格の判定を受けている。
National Gridは日本工営が提供するNK-EMSと、自社設備である蓄電池システムを利用して、送電周波数を安定させるサービスを提供する(図1)。このサービスに関連する設備はすべてイギリスのサウスウェールズに設置する。そしてこの設備は、売電事業者が自社の中長期的な電力供給力を確保する場である「容量市場」へのサービス提供にも対応しているという。
図 National Gridが日本工営の「NK-EMS」を利用して提供するサービス
出所 日本工営
日本工営は、NK-EMSにはピークカット・ピークシフトや、風力などの不安定な再生可能エネルギーとの連携制御などの組み込み可能になっているという。今後はさまざまなメーカーの蓄電池システムへの対応に向けて改善を予定している。そして日本では、2020年に政府が予定している発送電分離の前に、VPP(Virtual Power Plant:仮想発電所)など、電力業者向けのさまざまなサービスが登場し、市場の拡大を期待する声も多い。日本工営は、周波数調整、デマンドレスポンスの機能をより高度なものに改善を続け、日本国内での事業拡大を目指すとしている。
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日本工営