[視点]

個人情報保護法改正は何をもたらすのか スマートメーターのデータの取り扱いはどうなる?

2015/03/25
(水)
中尾 真二 フリーランスライター

2015年2月18日、かねてより議論されていた個人情報保護法の改正法案が、1月26日より開催中の通常国会に上程された。個人情報保護法の改正については、2014年6月に改正のための「大綱」が公開され、パブコメの募集を経て改正案の「骨子」が12月に公開されている。その後、通常国会が始まってからも各界からの意見が出された末、ようやく改正案の原案が固まった。新しい個人情報保護法が施行された場合、スマートグリッドを取り巻く電力事業にどのような影響があるのだろうか。

個人情報保護法はイノベーションを阻害する?

 
個人情報保護法注1を改正しようという動きは、2013年後半から活発化してきた。背景には、ビッグデータビジネスが拡大するなか、同法が個人情報を含むビッグデータの処理や流通の阻害要因となっているという市場認識があった。イノベーションを阻害する規制は見直すべきという意見が、ヤフー、新経済連盟など産業界から出され、政府も、アベノミクスの第3の矢のひとつとして法改正を決めた。
 
その後、産業界、弁護士、セキュリティ専門家、消費者団体などによる検討会が組織され、法改正の議論が始まったが、データを自由に使いたい産業界と専門家の間ではさまざまな点が争点となった。主な争点を図1にまとめた。
 
 
図1 個人情報保護法改正についての各界の主張
〔出所 著者作成〕
 
 

最終的な法改正のポイント

図1のような議論を踏まえて、2015年2月18日に上程された改正法の原案では、下記の3つをポイントとして挙げることができる。
 
(1)個人情報の再定義、拡大は行わない
(2)合意した使用目的以外のデータ利用は原則認めない
(3)個人情報等の利用を監視する第三者機関を設置する
 
(1)については、グレーとなるパーソナルデータ(購買履歴やサイトの閲覧情報など)を個人情報の定義に明記する意見があったが、再定義は行わないことになった。なお、「個人情報」とは、現状の法律でも住所や氏名、メールアドレスだけが個人情報と定義されているわけではない。(2)と(3)は、ビジネスをなるべく阻害しない形で、EUやOECD(Organisation for Economic Co-operation and Development、経済協力開発機構)の規制に整合させるため、アメリカ方式とEU方式の折衷案となった注2
 

▼注1
個人情報の保護に関する法律(平成十五年五月三十日法律第五十七号)、http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H15/H15HO057.html
 
▼注2
EU方式では、明確な監視機構を用意し、EU指令によって規定される保護ポリシーのもとに適正な運用を促すという方式をとっている。これに対して、米国方式では、情報のやり
取りに法規制をかけず、不正・不当な利用については、しかるべき機関が各種の法律を駆使
して取り締まりを行うという方式をとっている。

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