[注目される「水素」技術と最新利用技術]

注目される「水素」技術と最新利用技術≪第1回≫ 〔パート1〕なぜ今「水素」なのか 水素社会実現を目指す日本の取り組み

—2040年にはCO2フリーの水素供給システムの確立へ—
2015/04/01
(水)
SmartGridニューズレター編集部

市場はどう動いているか

〔1〕家庭用燃料電池(エネファーム)

 エネファームは、これまでに11万台超が一般家庭などに導入されている。価格については、2009年の導入開始時には300万円を超えていたが、現在では150万円を下回る程度まで価格が下がっており、国の補助金(30〜40万円)を含めれば、100万円を切るレベルになってきている。国の補助金については、2014(平成26)年度補正予算で222億円を投じている。将来的には、2020年に140万台、2030年に530万台という目標をロードマップで掲げており、その達成のためには、さらなるコストダウンが望まれる。

 現在、エネファームは、戸建て住宅に設置されているケースが多いが、2014年から集合住宅向けの販売が開始され、今後、さらなる小型化を含めた設計等の改良が必要である。

 また、需要が見込まれるドイツなど欧州を中心とする海外市場を目指して一部の事業者はすでに販売を開始しており、今後積極的に展開していくことが望まれる。

〔2〕燃料電池自動車+水素ステーション

 FCVとその燃料の供給場所としての水素ステーションの整備は、双方同時に取り組む必要がある。

(1)燃料電池自動車

 2002年12月にトヨタやホンダが世界で初めてFCVを5省庁にリース販売した12年後の2014年12月、トヨタが世界で初めて一般販売を開始した。当時、FCVの価格は数億円とも言われていたが、トヨタ「MIRAI」は、税込723.6万円で販売されるまでになっている。

 また、トヨタだけでなくホンダも2015年度中の国内での販売開始を発表しており、日産もその後の発売を予定している。

 今後のFCVの普及に向けて、ロードマップでは、2025年頃には、FCVの価格を、同車格のハイブリッド車と同等の競争力にすることを目指し、また燃料(水素)代についても2020年頃にはハイブリッド車と同等以下の価格になることを目指している。併せて、FCVの海外展開に向けて、国際的に統一された基準づくりと国内法令の調和、相互承認などが推進されている。

 また、燃料電池バスや、燃料電池フォークリフトなど他の輸送用途についても国内外で実証試験が実施されている。燃料電池バスについては、2015年1月から豊田市において、トヨタMIRAIの燃料電池システムを搭載した新型車両の実証実験が開始されているなど、2016年の市場投入の目標に向けた取り組みが進められている。

(2)水素ステーション

 水素ステーションについは、FCVの本格的な普及に先行して整備が進められてきている。ロードマップでは、2015年度内に4大都市圏(首都圏、中京圏、関西圏、北部九州圏)を中心に合計100カ所程度の整備を目標としている。

 現在、水素販売価格については、インフラ事業者が1,000〜1,100円/㎏に設定しており、これは、ロードマップに掲げる2020年頃のハイブリッド車と同等以下という価格目標を前倒しする動きになっている。

 また、水素ステーションの更なる低コスト化を目指して、2020年頃までに、整備・運営にかかるコストを半減していくため、水素圧縮機や蓄圧機などの構成機器の低コスト化に向けた技術開発を進められるとともに、新型の蓄圧機などの使用が可能となるような規制の見直しも今後進められる予定である。

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