安価で安定的な水素供給システムの確立
将来的には、水素は、海外の未利用エネルギー(例えば褐炭や原油随伴ガスなど)から製造され、有機ハイドライド注8や液化水素のような水素キャリアに変換して船で輸送し、国内で水素を取り出すことも期待されている。2015年度からこのような水素供給システムの確立に向けた実証事業が開始される予定である(図4)
図4 安価・安定的な水素供給システムの確立
〔出所 経済産業省資料より〕
なお、有機ハイドライドについては水素の取り出しの工程で、大規模な設備や高効率化が必要という課題があり、液化水素については、液化水素を運ぶ専用船の開発や水素タンクの大規模化、輸送中の蒸発を抑える技術が必要などの課題が残されており、実証事業を通じてこれらを解決し、実用化につなげていくことが期待されている。
また、水素製造時にCCSや再生可能エネルギーを活用することで、トータルでCO2フリーの水素供給システムを構築し、環境負荷の低減に貢献する取組も進められていく予定である。
世界に先駆けて水素エネルギーの利活用の取り組みを進めている日本が、さまざまなチャレンジを積極的に行い、新しいエネルギー社会の姿を世界に発信し続けることに期待したい。
◎取材協力
星野 昌志(ほしの まさし)
経済産業省 資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部 燃料電池推進室 室長補佐
▼ 注8
有機ハイドライド:水素を効率よく運ぶためには、液体にして体積を減らすことが重要。水素をトルエンと化合させ、常温・常圧で液体として存在するMCH(メチルシクロヘキサン)などがある。