[特別レポート]

日米欧のグリッド・モダナイゼーション(電力網の近代化)への取り組み― 第1回 米国 ―

2016/12/13
(火)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

COP21「パリ協定」を背景に、各国では、地球温暖化対策も考慮したエネルギー政策が展開され、太陽光や風力などの再エネの導入と、集中型電源と分散型電源の統合運用などが活発化している。自立かつ持続可能なエネルギーの確保はナショナルセキュリティでもあり、自国の経済活動にも大きく関係してくる。
本レポートは、日米欧の次世代に向けたエネルギーインフラへの取り組みについて、3回にわたって見ていく。第1回は、米国のグリッド・モダナイゼーション(Grid Modernization、電力網の近代化)について見ていく。

トランプ次期大統領とグリッド・モダナイゼーション

〔1〕トランプ次期大統領の公約

 2016年11月8日(現地時間)、米国の大統領選の一般投票で共和党候補のドナルド・トランプ氏が次期大統領に選ばれた。選挙期間中から気候変動や再生可能エネルギー(以下、再エネ)に関する取り組みに否定的なコメントを繰り返してきたトランプ氏が大統領になることで、今後、米国のエネルギー関連政策が大きく変わっていく可能性がある。

 そのようななかで改めてトランプ氏の公約を見てみると、彼はインフラへの優先的な投資を重視しており、その中に「近代的で信頼性の高い電力網(a modern and reliable electricity grid)注1」への投資をしていくと明言している。

 電力網、つまりグリッド(電力網)を最新化・近代化していくための取り組みは、トランプ氏に限らず、民主党のオバマ政権時代にも積極的に行われてきた取り組みである。その中でも現在にまで影響を与えている取り組みが、2015年4月21日に発表されたQuadrennial Energy Review(QER、4年に一度のエネルギー計画見直し)である。

 これは、2014年1月9日にオバマ大統領が署名した覚書(Presidential Memorandum)注2に基づいて、ホワイトハウスの国内政策審議会(The White House Domestic Policy Council)と科学技術政策府(Office of Science and Technology Policy)が共同で議長を務めるタスクフォースで作成されたものである。

〔2〕2015年4月に発表されたQERの内容

 その第1弾として発表されたQERは、“Energy Transmission, Storage, and Distribution Infrastructure”(エネルギー送電、貯蔵、配電インフラ)注3と名づけられており、次に挙げるテーマが扱われている。

  1. Increasing the Resilience, Reliability, Safety, and Asset Security of TS&D Infrastructure (送電、貯蔵、配電インフラのレジリエンス、柔軟性、安全性、資産セキュリティ)
  2. Modernizing the Electric Grid(電力網の近代化)
  3. Modernizing U.S. Energy Security Infrastructures in a Changing Global Marketplace(変化するグローバル市場における米国エネルギーセキュリティインフラの近代化)
  4. Improving Shared Transport Infrastructures(共用輸送インフラの改善)
  5. Integrating North American Energy Markets(北米エネルギー市場の統合)
  6. Addressing Environmental Aspects of TS&D Infrastructure(送電、貯蔵、配電インフラの環境面の取り組み)
  7. Enhancing Employment and Workforce Training(雇用と労働者トレーニングの強化)
  8. Siting and Permitting of TS&D Infrastructure(送電、貯蔵、配電インフラの立地と許可)

 これを見ると、最初から2点目の項目でグリッド・モダナイゼーションが扱われていることがわかる。グリッドを近代化するための取り組みを指すこの「グリッド・モダナイゼーション」(Grid Modernization)という呼称は、2008年頃から使われ始め、本格的には米国においては民主党のバラク・オバマ氏が大統領に就任した2009年頃から継続的に使われている注4

 オバマ大統領が就任した直後の米国では、「グリッド・モダナイゼーション」という用語よりは「スマートグリッド」という用語の方がよく使われていたが、2016年には第1回のGrid Modernization Forum注5が開催されるなど、「グリッド・モダナイゼーション」という用語がより一般的に使われるようになってきている。


▼ 注1
INFRASTRUCTURE | Donald J Trump for Presidentを参照。

▼ 注2
https://www.whitehouse.gov/the-press-office/2014/01/09/presidential-memorandum-establishing-quadrennial-energy-reviewを参照。

▼ 注3
http://energy.gov/epsa/quadrennial-energy-review-first-installmentを参照。

▼ 注4
https://www.google.co.jp/trends/explore?date=all&q=%22grid%20modernization%22を参照。

▼ 注5
Grid Modernization Forum 2017を参照。

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