今後の展開:2020年の東京オリンピック・パラリンピック目指して
今後、日本でも再生可能エネルギーは急速に普及していくことが予測されるが、日本ではこれらすべてをまかなえないこともあり、これまで海外からオイル(石油)などを輸送したように、再生可能エネルギーで発電された電力を水素ガスあるいは水素キャリアの形で輸入することも想定されている。
そのため、極端な場合、南極や北極など、いろいろな航路の選択肢も考えておく必要もある。それがどのようなケースであっても、より安定した貯蔵や輸送ができることが重要であり、そのバランスが考慮された水素キャリアとして、同研究ではMCHを選択している。
現在、水素からMCHをつくる場合の変換効率は、99〜100%とほぼ100%の値を出している。一方、MCHから水素を取り出すという逆の場合の効率は少し下がるが、それでも95%程度の値となっている。
触媒については、いろいろな金属の化合物があり、ニッケル系やプラチナ系など各社各様となっている。
産総研の水素キャリアチームでは、現在は各社から提供された触媒を評価するという段階であり、さまざまな実験が行われている。また、コージェネの研究も活発に行われている。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは、日本として「水素の可能性について世界に発信」することも想定している注12。
この頃には、水素によるクリーンな次世代エネルギーの利用が始まっていることに期待したい。
◎取材協力

辻村 拓(つじむら たく)
独立行政法人 産業技術総合研究所(産総研)福島再生可能エネルギー研究所
再生可能エネルギー研究センター 水素キャリアチーム 研究チーム長<
2004.3 同志社大学大学院工学研究科修了、博士(工学)取得
2004.1 (独)産業技術総合研究所エネルギー利用技術研究部門 研究員
2010.3 ローレンスリバモア国立研究所 客員研究員
2012.8 (独)産業技術総合研究所企画本部 企画主幹
2013.10 同再生可能エネルギー研究センター水素キャリアチーム長現在に至る。
[研究歴]:水素噴流の混合気形成・自着火過程の実験・計算解析、新燃料(GTL、BDF、水素、天然ガス)のエンジン・自動車利用技術、革新的次世代低公害車技術開発(NEDO事業)等に従事。
▼ 注12
水素・燃料電池戦略協議会において、2014年6月に策定されたロードマップにおいて明記されている。